WEDGE REPORT

2016年5月27日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

このような野蛮な時代が二度と来ないことを願う(著者撮影)

 トランプの支持者は一般的に、社会に不満を抱いた低収入、低学歴の白人と言われてきたが、こうしたバットン氏のような階層にも支持者がいるということは驚きだった。

 実は、ニューヨークのスケート関係者はトランプにちょっとした借りがある。

 80年代にセントラルパークにある屋外リンク、ウォールマンリンクの改装を成功させた立役者がトランプだったからだ。

アメリカの移民問題が孕む矛盾

 ニューヨーク市が6年と1200万ドルの予算をかけてもうまくいかずに醜態をさらした改装工事を、トランプは請け負ってからわずか数カ月で完成させた。それ以来、一部のニューヨーカーの間で、トランプは「エゴの塊ではあるが、やるときはやる」という評価もあるのだろう。

 とはいうもののことが米国大統領となると、その責任の重さは冗談ごとではすまされない。何よりバットンが口にした、「株主であるアメリカ国民」の中に、我々マイノリティは含まれていないことは確実である。

 アメリカ人の友人が、ある日ポスターをFBに書き込んだ。こちらを睨んだネイティブアメリカンの顔写真にこんなコピーがついている。

 So you’re against immigration? Splendid! When do you leave?
(移民に反対? そりゃ素晴らしい。で、いつお発ちかね?)

 本来正当なアメリカ人といえるのは、彼らネイティブアメリカンのみである。バットン氏もトランプ自身も、元を正せば移民の子孫に間違いない。アメリカの移民問題を考えると、いつも芥川龍之介の「くもの糸」を思い出す。
それにしてもこの大統領選、一体どういう顛末になるのか。ニューヨーカーたちは息を呑んで見守っている。

  
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