予想外の役割果たしたサドル師
イラクのアバディ首相は3月31日、議会内の政党との十分な事前の相談をせず、テクノクラートからなる内閣にしたいとして、閣僚名簿を議会に提出しました。その後、政党の反発があり、政治危機が生じています。
4月30日、モクタダ・サドルの支援者のデモが議会のあるグリーン・ゾーンに侵入、議会を占拠しました。イラク政府はこれに対抗して、非常事態宣言を出しました。しかし、5月1日、サドルはデモ隊に議会占拠を解くように命じるとともに、アバディ首相の新内閣提案などの政治改革を支持する旨の声明を出しました。
アバディ首相が提案しているテクノクラート内閣は理想的ですが、政党の支持がなく、政治的には難しいと言われていました。サドルがアバディ首相の政治改革支持に回るというのは予想外です。サドルがこういう役割を果たすことは全く念頭に置かれていませんでした。
今回の件でイランはどういう役割を果たしたのか、マリキ元首相やシスタニ師はどうしたのか、よくわからないことが多くあります。
このNYTの社説は、今後のイラクの政治の安定にサドルが有益な役割を果たすことに、疑念も持ちつつ期待していますが、サドルには自己の力を誇示することなど複雑な思惑があり、彼に有益な役割を期待するのは時期尚早であると思います。
ただ、イラクが政治的な危機を乗り越え、「イスラム国」への攻撃や経済問題に向き合うことになるのであれば、それはもちろん歓迎できることです。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。