オトナの教養 週末の一冊

2016年6月17日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――その浦さんの提案は、中国社会では支持されているのでしょうか?

城山:中国社会全体ではそれほど支持されていません。しかし、浦さんは提案を実現させることよりも、問題提起をすることが狙いなのです。提案後、浦さんのもとには、毛沢東支持者から引っ切り無しに抗議の電話があったそうですが、彼はその電話一つひとつに対し、議論し論破していきます。そうやって否定はタブーであり、普通では議論にならない毛沢東という存在を、問題提起することで議論を巻き起こしていく。

 また改革派の人たちは、文化大革命が起きてからちょうど50年目にあたる今年、ネット上に文化大革命に関する文章を発表していますが、政府によりすぐに削除されている状況です。ただ、削除される前に転送される。こうしたネット上の広がりによって文化大革命に対する反省や議論を巻き起こしているのです。

 つまり、民間の改革派の人たちは小さな力ではあるけれども、文書を書いたり、浦さんのようにネットで発信して問題提起をすることにより、全く何も考えていない人にも、毛沢東を崇拝している人にも玉を投げることで議論を起こしている。北京特派員として見ていてこのやり方は非常に面白いと思いますね。党の見解ばかり載せる新華社や人民日報だけを読んでいても決してわからない動きですからね。

――毛沢東支持者は日本に対し強硬な政策を取るべきだと主張する人が多いわけですが、一方で東京など外国人観光客が多い土地で暮らしていると、爆買いに代表されるように中国人観光客をよく目にします。中国の方々は現在日本に対しどのようなイメージをもっているのでしょうか?

城山:これまで中国の人はほとんど日本に来ませんでした。しかし豊かになり、日本を訪れる人は増えていますが、今でも軍国主義国家だと思っている人も多いのです。

 中国の共産党にとって抗日戦争に勝利したことで新中国が成立したため、「抗日」は今も正統性を保つ大きな柱になっています。共産党の正しさを宣伝するため抗日を利用し、その利用価値は高いと認識している。日本の軍国主義がかつて行った乱暴な行為を歴史教育で強調することにより愛国感情を高めることも出来ます。また、反日デモを容認して「日本」を「悪」として照準を合わせれば、一般の若者はデモに参加することで、彼らが普段から持っている社会に対する不満のガス抜きにもなります。

 日中関係で何か問題が起きれば、人々が一番接触する機会の多いテレビ、特に中央テレビでは、日本の軍国主義を強調した内容や、日本人からすればやり過ぎではないかという報道もしょっちゅうありますね。事実を無視した抗日ドラマが今でも多く放送され、中国人の対日感情に非常にマイナスに働いています。こうしたプロパガンダや対日宣伝の影響で未だに日本は軍国主義だと思っている人たちがいる。それがなくなれば、あるいは弱まれば日本に対するイメージは格段に良くなるでしょう。

 一方、日本の一部の政治家によるかつて日本が戦争で行った行為に対する配慮の足りない発言が、中国の民間の人たちの怒りに火をつける場合もあります。私はこういう民間に残り続ける気持ちも大切にして取材していたつもりです。

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