2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月27日

世界における地位回復狙うプーチン

 08年のグルジア戦争でロシアは勝利はしたものの、装備の旧式化が露わとなり、その前後からプーチンは軍改革と装備近代化に乗り出した。2020年までに7000億ドルを費やすことが予定されている。その結果、ロシアはクリミア併合、東ウクライナへの介入、シリアでの爆撃を首尾よく行うことができ、ユーラシアに本格的な軍勢力として復帰したのである。また07年には、NATO周縁での偵察飛行を再開した。14年(クリミア併合、東ウクライナ紛争)はこうして、欧州に東西間の軍事対立が復活した年と言える。

 シリア爆撃は、ロシア軍が旧ソ連域外に乗り出した初めてのケースである。ロシアの目的は、シリア、イラン、イラク、クルド地域等における地歩・利権を守ることにある。それは、ロシアを国として保持し、世界における正当な地位を回復せんとするプーチンの野望の一環である。そうやって、ロシアは、この25年間失っていた中東における地歩を見事に回復した。

 ロシアは次にどこで軍事力を行使するだろうか? 北極圏での資源獲得競争が云々され、ロシア軍は同地域の基地を再開したが、フィンランド、スウェーデンがNATOに加盟する等の急変がなければ、武力紛争は起るまい。もっと可能性が高いのはロシアの南辺、つまり中央アジア方面である。アフガニスタンについてはアフガン戦争敗北のトラウマがあるので、直接介入はしないだろうが、中央アジアはロシアにとって緩衝地帯であるので、ここにISISがアフガニスタン方面から侵入してくれば、ロシアは例えば集団安全保障条約機構(NATOのロシア版)の枠で介入するだろう。

 シリア介入で失敗するとか、経済混乱に陥らない限り、ロシアは中国、米国に並ぶ大国だと言い立てて、海外での軍事力行使を続けるかもしれない。

 ロシアは、NATO加盟国を攻撃することはない。核戦争につながりかねないからである。しかしバルト諸国、ポーランドはロシアを恐れ、NATOの対応強化を実現した。ロシアはこれに応えて、西部方面での軍編成を変えている。にらみ合いが続くことになろう。


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