もう一つの意外な無視できない遠因とは?
英国人にとって今回の離脱賛成の主な要因は「EU嫌い」や「テロ」の脅威であるが、もう一つの遠因も無視できない。将来EUに参加する事を表明している「トルコ問題」に対して多くの英国人が違和感を持っているようだ。トルコは人口7500万人でいずれEUに加盟すればEU最大の国家になる。加えてトルコの面積はEU最大のフランス(約55万平方キロ)よりも大きく日本の約2倍(約78万平方キロ)の国土を有しトルコがEUに加盟した場合、大量の労働者が流入することは確実である。
今やドイツ国内のトルコ系移民は300万人とも400万人ともいわれている。当然、英国にも多くのトルコ系移民は押し寄せてくるだろう。当社の取引先であるトルコ企業の友人(専務)はドイツ生まれのトルコ人であるが、アイデンティティーはトルコ人でも感覚的にはほぼドイツ人である。彼はアーヘン大学を卒業した極めて優秀なドクターで完全にドイツ人として溶け込んでいる技術者であるが、このような優秀なトルコ人が欧州人の職を奪っているのも事実である。英国人にとっては、意識はしなくてもかつてのオスマントルコの来襲にも似た恐怖感を潜在的に感じているのかもしれない。
英国人が最も嫌う国家はどこなのか?
当社に来社したオーストリア人は、トルコ系の移民の二世や東欧系の優秀な移民との付き合いが多いので、ドイツ人やフランス人がそして英国人がどのように感じているかを熟知していた。従って今回の離脱問題についての英国内の雰囲気を読んでいたのである。一方ではEU諸国の中で経済的にはドイツの独り勝ちになっていることが英国人にとっては面白くないと指摘していた。EU内の経済運営を通じて平等に富を分かち合えることは無理にしても、常にドイツの独り勝ちでは面白くないのも当然である。
特に戦勝国の立場からすると益々ドイツの経済力が強くなっていくことが我慢できないと感じる英国内の空気も影響したようだ。一方、ギリシャのいい加減さは英国国民にとってさらに許しがたいと感じているはずだ。そもそもEUの組織が肥大化し官僚組織化して行けば、EUの運営が上手くいく訳はない。そこにドイツの独り勝ちと、ギリシャをはじめとする無制限に英国にやってくるEU市民を規制することができなくなってきたのだ。英国の人口が約6000万人のところ2014年時点で300万人のEU市民が移住している。今後まだまだ移民や難民が増加する見込みだから英国民は嫌気がさしている訳である。