2022年9月28日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年7月11日

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 人権状況が改善しないエジプトのシシ政権に武器供与をすることにしたオバマ政権を批判する論評です。米国やエジプトの活動団体からの情報や意見を踏まえた論評ですが、政府側の言い分も活動団体側の言い分も相互に疑心暗鬼になっているように思われます。エジプトの情勢は小康状態になっているように見えますが、この記事によれば、陰湿で不幸な状況が起きているようです。

 民主化・人権問題は、当初からエジプトと米国や欧州との間で問題となってきました。シシ政権は、13年にモルシ政権を実質的に転覆させ、14年の大統領選挙を通じてできた政権です。しかし、シシ政権の下で治安は回復し、経済も改善してきました。シシは軍人であり、当初から西欧関係者より猜疑心を持たれてきました。実際にシシ政権はエジプト、米国などの民主化団体や人権団体、報道関係者などの弾圧を強めています。シシ政権の矛先は当初はムスリム同胞団やハマスといったイスラム勢力に向けられていましたが、最近は民主化・人権団体に重点が移ってきていると言われます。他方でシシ政権と特にハマスとの関係は良くなっているとも言われます。

エジプトへの軍事援助はやむを得ない

 シシ政権に対する一定の軍事援助は、エジプトと中東地域の安定を確保する観点からはやむを得ないのではないでしょうか。民主化・人権一本でいかないところが中東の複雑なところです。それに、エジプトはロシア、中国に対しても全方位外交(ヘッジ)を強めています。シシは15年9月の中国抗日式典にも出席しました。その意味でも米国には油断できない理由があるのです。

 人権、民主主義と政治安定はしばしば対立する課題です。シシ政権への人権改善圧力は賢く継続していくべきですが、人権、民主主義の問題は、大きな、長い目で見ることが必要ではないでしょうか。
 

  
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