目の前から奥へと続く一筋の道、あるいは森と湖の幻想的な風景の中を進む白い馬。誰もが目にしたことのある風景画の大家、東山魁夷(かいい)の絵。数々の代表作を通して、その画業を振り返る展覧会が九州国立博物館で開催される。
会場には、戦前に描かれた「山谿秋色(さんけいしゅうしょく)」をはじめ、第3回日展で特選を受賞、東山絵画の出発点といわれる「残照」、戦後の日本絵画の金字塔「道」、そして絶筆となった「夕星」など、初期から晩年までの名作が勢ぞろいする。
見どころの一つが、東山魁夷の最高傑作といわれる奈良・唐招提寺御影堂(みえいどう)の障壁画。総長76メートル、構想から完成まで10年が費やされた大作で、今回が九州初上陸となる。
昭和50年(1975) 唐招提寺蔵
障壁画は襖(ふすま)絵68面と床の間の絵からなり、2期に分けて描かれ、奉納された。第1期の作品では、海の景色の静と動を表現した「濤声(とうせい)」など、日本の風景を鮮やかに描写。それとは対照的に、第2期では唐招提寺の開祖、鑑真和上の故郷である中国の風景を墨一色で表した。色彩と水墨の表現の違いを見比べてみるのも興味深い。
なお、唐招提寺御影堂は現在改修工事が進行中で、鑑真和上の命日に行われる障壁画の公開も数年にわたって実施されないため、本展は障壁画を間近で見られるまたとない機会となる。
●特別展 東山魁夷 自然と人、そして町
<開催日>2016年7月16日~8月28日 *会期中、展示替えあり
<会場>福岡県太宰府市・九州国立博物館(西鉄太宰府線太宰府駅下車)
<問>☎050(5542)8600
http://www.kyuhaku.jp/
*情報は2016年6月現在のものです。料金・時間・休館日などの詳細は、お出かけの際、現地にお確かめください
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