2024年4月24日(水)

前向きに読み解く経済の裏側

2016年7月18日

 財政赤字が膨らんだのは、失業対策として公共投資などを行なったことに加え、「増税すると景気が悪化して失業が増えてしまう」という反対論が強かったからです。そして実際に増税して景気が悪化して財政赤字がむしろ悪化してしまったこともありました。景気は「税収という金の卵を産む鶏」であるのに、それを殺してしまったからです。

 失業が問題であった真の原因は、日本人が勤勉で倹約家であることでした。勤勉に物を作り、倹約に務めたことで物が余ったのです。余った物は輸出をしましたが、それにより円高を招いてしまい、際限なく輸出を増やすことは出来なかったのです。そこで企業は人を雇わなくなり、失業が増えた、というわけです。

今後は失業より労働力不足が問題となる

 少子高齢化によって、現役世代の人口(作る人)が急激に減りますが、総人口(使う人)の減り方は緩やかです。そうなると、失業問題は自動的に解決し、労働力不足が問題となってきます。現在の日本経済は、まさに移行期で需要と供給のバランスが良い時期にあるのです。そして、今後は少しずつ労働力不足の時代になっていきますが、じつは労働力は少し足りないくらいが経済にとって活力になるのです。

 非正規労働者の待遇は、労働力の需給を素直に反映するので、労働力が不足すると、非正規労働者の待遇が順調に改善して行くでしょう。そうなれば、非正規労働によって生計を立てている人々の生活が改善し、ワーキング・プアが消滅します。そうなれば、非正規同志が結婚しても子供が産めるようになり、少子化も緩やかになるかも知れません。

 1日4時間しか働けない高齢者や子育て中の女性なども、仕事を探せば簡単に見つかるようになります。まさに「一億総活躍社会」ですね(笑)。子育て世代は消費性向が高いので、所得の増加が消費に直結しやすいですし、高齢者も、仕事を見つけられるようになれば、老後の不安が和らぎ、消費が増えることも期待されます。

需要が増えれば供給が増える

 現在、経済成長率がほとんどゼロなのに、労働力が不足しています。これを見て、「日本経済は労働力不足なので成長出来ない(潜在成長率がゼロである)」と心配している人も多いようですが、これはバックミラーを見ながら運転するようなもので、将来予測としては正しくありません。

 心配要りません。需要が増えれば供給も増えるからです。日本企業は、これまで省力化投資を怠って来ました。安い労働力が自由に使えたからです。しかし、これからは労働力不足の時代になるので、企業は省力化投資を迫られることになるでしょう。「省力化投資の必要が無かったから投資をしてこなかった時代」に投資が行われなかったというデータを用いて、今後の投資を予測するのはミスリーディングなのです。

 ここで明るい材料は、これまでサボって来た分だけ、日本経済には「少しだけ省力化投資をすれば大幅に省力化できる余地」が充分にあるということです。これは、今後は設備投資が増えて景気が上向くという需要面と、労働力不足でも供給力は増やせるという供給面と、両方で明るい材料です。


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