海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年7月17日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

外交・安全保障政策の強化

 第3に、保守票を固める意図があります。宗教保守は、過去に人工妊娠中絶に賛成したトランプ候補に懐疑的です。保守派のペンス知事起用は、同派の中にあるトランプ候補に対する否定的なイメージを弱める狙いがあります。

 第4に、トランプ候補の中西部と白人男性票の獲得に対するこだわりも見逃せません。ペンス知事の選定は、なかでも「錆びた工業地帯」と言われるオハイオ州やミシガン州などを見据えていると言えます。西部や南部の激戦州及び女性票やヒスパニック票よりも、中西部と白人男性票でクリントン候補に挑んでいるトランプ候補の姿勢は一貫しています。そこに、同候補の執拗さを感じざるを得ないのです。

 第5に、トランプ候補の弱点である外交・安全保障政策の強化があります。ペンス知事は下院外交委員会に所属していました。

 第6に、トランプ候補が自分と相違したタイプの職業政治家を起用した点です。同候補とは性格がかなり異なり、しかもソフトに語るペンス知事にブレーキ役を期待しているのでしょう。性格における補完です。

 以上に加えて、ペンス知事起用に関してもう1点触れておきます。5月3日に中西部インディアナ州で行われた共和党候補指名争いで、トランプ候補はライバルのテッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)並びにジョン・ケーシックオハイオ州知事を破り、彼らを撤退に追い込みました。その結果、同党の事実上の候補になったのです。それ以来、同候補は演説の中で、インディアナ州の勝利について度々触れて振り返るのです。言うまでもありませんが、インディアナ州には特別な思いがあることは間違いありません。

一致しない通商政策

 さて、ペンス知事起用には課題も存在しています。トランプ候補とペンス知事の付き合いは浅いため、どの程度相互理解があるのか不透明です。加えて、同候補とペンス知事は政策面で一致していない点があります。通商政策をみてみましょう。

 ペンス知事は、自由貿易主義者で環太平洋経済連携協定(TPP)に賛成の立場をとっています。一方、トランプ候補は、保護貿易主義の色が濃く、同協定は北米自由貿易協定(NAFTA)よりも「ひどい」と繰り返し主張しています。では安全保障政策はどうでしょうか。

 クリントン候補と同様、ペンス知事もイラク戦争に賛成の立場をとりました。他方、トランプ候補はイラク戦争に否定的な立場をとっています。同候補は、イラク戦争賛成のクリントン候補は判断が悪いと批判してきました。ペンス知事も判断力に欠けることになります。

 しかも、今回の共和党候補指名争いのトランプ候補の目玉政策である例の「国境の壁」やイスラム教徒米国入国全面禁止に対して、ペイン知事は反対を表明しています。今後、米メディアはトランプ候補とペイン知事の政策の不一致に関して精査をしてくることは確実です。それにトランプ陣営が対応できるのかに注目です。

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