2024年11月23日(土)

ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2010年2月1日

 日米関係に生じ得る断絶や意見の不一致は、昨年の総選挙の頃にニューヨーク・タイムズとインターナショナル・ヘラルド・トリビューンのウェブサイトに掲載され、今やすっかり有名になった「鳩山寄稿」で明らかになっていた。

 英語版の寄稿文は、鳩山首相や民主党の「ゴッドファーザー」小沢一郎氏をはじめとした党幹部らが様々な問題について抱く意見や懸念の概要を記したものだったが、特に目立ったのは、より対等な日米同盟という考え方であり、また、明らかに米国の参加を想定していない何らかの形の東アジア共同体を発展させようとする民主党の思惑だった。

 これに加え、国連の枠組みに入るものを除けば、どんな日米平和維持活動にも反対し、一方では中国と近づくことを望んでいるというよく知られた小沢サンの姿勢が相まって、米国保守派は一斉にメディアの「キャンペーン」に乗り出し、民主党の「信頼性」に対して極めて感情的な疑念を提起することになったのだ。

 そればかりか米国の保守派は、対中関係の改善を望む小沢、鳩山発言を捉えて、民主党政権が言う米国との「より対等な関係」というものは、ただ単に中国政府とより良い関係を構築する以上の何かずっと大きなものを意味している「ヒント」ではないかと考えた。

 もちろん、米国の対日政策は長年、日本に中国との関係改善を促すとともに、アジア全域の米国の同盟国および貿易相手国、とりわけ韓国、オーストラリア両国との関係強化を促すことだった。クリントン政権時代に始まり、2期にわたるブッシュ政権時代もずっと続いた重大な懸念は、「歴史問題」を巡る対立が、米国、日本、韓国の同盟関係の調和の取れた機能に害を及ぼすということだった。

小沢サンときたら、
「日本人民解放軍」引きつれ北京詣で

 ところが、そこへ小沢サンが総勢600人に上る途方もない「日本人民解放軍」を引き連れて北京を訪問し、そのすぐ後には、中国共産党幹部と天皇の「慌しい」会談を無理やり実現させるという前代未聞の決断を下したのである。

 ここに至って、ホワイトハウス内部でさえも突如、もしかしたら日本が言うところの米国との「より対等な関係」と中国との関係「改善」は、実は日米同盟の戦略目標に関して日本側の考え方に何かもっと根本的な変化が起きていることを示唆しているのかもしれないという懸念が浮上した。

 私が今WEDGEのために当コラムを執筆している段階で、日米両政府は、国務省および国防総省高官と防衛省および外務省局長の会談を東京で設ける準備を進めている。公表されている会談の目的は、15年近くにわたる交渉の末、2006年に自民党率いる連立政権が米国政府と合意した普天間移設計画に反対する候補が勝利を収めた沖縄・名護市長選の影響について、米国が鳩山政権の見解を聞くことだ。

期限がなぜ5月? いまだにナゾ

 鳩山首相が今年5月までに普天間基地に関する最終判断を米国側に知らせると約束している以上、これは十分に重要な議題だろう――もっとも、この5月という期限については、米国の政府関係者や評論家は今なお理解に苦しんでいる。民主党が連立相手の社民党を追放するという願いを実現するために、絶対に勝たねばならない重要な参院選を1~2カ月後に控えた時期だからだ。


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