年内の「李克強来日」が試金石
だからこそ王毅は記者団にもG20首脳会議に関して多くを語った。「今回のサミット(G20首脳会議)はこれまでの中で最も成果の多いものになるだろう。中国に対する国際社会の期待には背かない」
その上でG20首脳会議に合わせた安倍と習近平の首脳会談の実現について聞かれると、「中国側は検討しているところだ。当然われわれは首脳会談に向けて日本側が良好かつ適切な雰囲気と環境をつくるよう望む」と答えた。しかしG20での安倍の対中協力姿勢は習にとって喉から手が出るほど欲しいものであり、首脳会談は実現するだろう。
ただ長年王毅を取材してきた筆者にとって、予想外だったことがある。日中外相会談が終わり、王毅が韓国外相・尹炳世と共に、官邸に向かい、安倍晋三を表敬訪問したことだった。いくら外交儀礼の問題といえども、誇り高き中国の外相が韓国外相と同席し、日本の首相を表敬する。王毅ほどの外交スターなら、駐日大使時代も一対一で日本の首相と会えた。しかも尖閣情勢で日中関係が危機を迎える中、王毅は安倍との一対一の会談を求めるか、さもなければ韓国との表敬訪問には向かわないと考えていた。
安倍への訪問を終え、官邸でまた記者団に囲まれた王毅はこう語った。
「安倍首相は、『日本として杭州G20サミットの成功へ中国側を支持し続ける。建設的な役割を果たしたい』と表明した。同時に安倍首相は年内に(日本で)中日韓首脳会談を開けるよう期待している。当然われわれは適切な雰囲気と環境を絶えずつくり出し、年内の中日韓首脳会談開催を推し進めることを望んでいる」
習のメンツと威信を懸けたG20首脳会議を終え、本当に李克強首相が日中韓首脳会談に出席するため日本を訪問するのか。これが中国共産党・政府が対日関係改善を真剣に考えているかどうかの一つの試金石になる。
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