しかし、業界関係者は発売されたばかりのiPhone7には過大な期待を寄せていないようである。報道されているところをみても、JDIは産業革新機構に支援を求めていたり、iPhoneそのものを製造している鴻海の傘下に入ったシャープも、新任社長が日本の液晶産業全体へ更なる支援が必要と述べるなど、例年ならiPhone向けパーツの量産で忙しいはずのこの時期、苦しい状況を示唆する話しか聞こえてこない。
コンデンサーなどを供給している村田製作所の4~6月期決算も、iPhoneの不調が響き、減収減益となっている。
平井社長体制になってエレキ各部門の経営状況が上向いてきているソニーでも、稼ぎ頭だったはずのCMOSセンサービジネスが赤字部門に転落しており、アップル向け需要の減少が大きな要因とみられている。
次世代iPhoneへの期待感で有機EL関連の事業が数カ月前に話題になっていたが、早期の有機ELパネルの採用がなさそうなことから沈静化している。この有機ELにしてもおかしな話である。日本が得意で付加価値を高めてきた小型液晶の事業が低調になってきたので、有機ELに次世代事業として投資をする、というのがこのときのJDIやシャープの話だ。
しかし、その有機ELの供給先はやはりアップルだというのだが、そもそもiPhoneの需要が落ちてきたから、液晶が低調になってきたのに、そのアップルを頼って新型デバイスにかけるというのはかなりリスキーな話である。
それが筋の良い技術ならよい。だが、当初液晶よりも画質が良く視野角が広いといわれていた有機ELは、今では液晶パネルの技術が進化し、画質も視野角も液晶のほうが上回っている。
この液晶の優位性を自慢しているのもまた日本の液晶パネルメーカーである。有機ELに投資をして、来年か再来年のiPhone向けパネルをつくることがブレイクスルーになるというのだろうか。筆者にはアップルと心中するようにしか見えない。
iPhoneの良さは機能・性能だったのだろうか? 08年に日本の携帯電話端末メーカーが出していた当時の「全部入り」ケータイといえば、おサイフケータイ、ワンセグ、FMラジオ、防水、指紋認証など、さまざまな機能が搭載されていた。この中でiPhoneが持っているのは指紋認証ぐらいであり、それもiPhone 5sまで待たなければならなかった。機能・性能でいえば、ガラケーからiPhoneへの流れは退化であった。