トルコがクーデター事件後の非常事態宣言を延長、大規模な「弾圧」をする中、欧米はトルコへの批判を強めています。そういう中でロシアはトルコへの接近を図っています。今回の首脳会談でプーチンは、トルコによるロシアの戦闘機撃墜以来トルコに課していた経済制裁を撤廃しました。両国はトルコ・ストリーム・パイプラインの建設にも合意しました。このトルコ・ロシアの接近についてどう評価すべきでしょうか。
トルコがNATOから離れていく
両国間の軍事・諜報面での協力も合意されたというのが気になりますが、新しい同盟の可能性はないとトルコ側は説明しています。西側がトルコ・ロシアの接近を過大評価し、「トルコがNATOから離れていく」などと警戒心をもって対応することは逆効果になるように思われます。ロシアによる経済制裁解除は経済関係の正常化であり、トルコ・ストリーム・パイプラインは両者の利害が合致したものと冷静に受け止めるのが正しい対応であると思われます。
エルドアンもプーチンも権威主義的政権の長です。外交政策の展開において、民主主義国の指導者よりもずっと自由に決めることができます。戦闘機撃墜後プーチンは、「エルドアンに後悔させてやる」など、ひどい言辞を弄していましたが、今やエルドアンは盟友扱いです。ただ、権威主義国同士の関係は、指導者の決定による面が強く、振幅が大きいものになります。プーチン・エルドアン関係はその象徴のようにも見えます。トルコは伝統的にロシア不信が強いものです。あまりロシア・トルコ接近を心配する必要はないでしょう。
なお、シリアについては、アサド・ロシアと停戦協定など結んでも意味がないことは証明済みです。安全地帯設置や飛行禁止区域を設定し、実力でその担保をすることが人命の尊重につながるでしょう。軍事力でバックアップされない外交は成果を上げ得ないのがシリアの現状ではないかと思われます。ただ、オバマ政権はシリアでの軍事力行使に否定的であり、アサド、プーチンはその間に現地の状況を有利にしようとしていると思われます。プーチンの人道援助を届ける努力に関する発言は、今後のロシアの行動を見てその内容を判断すればよいと思われます。
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