台湾の蔡英文総統は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙とのインタビューに応じ、台湾は中国の圧力に屈することはない、台湾の経済的対中依存を低減させる、習近平との前提条件無き対話には応ずる用意がある、など述べました。同紙は、インタビューの概要を示す解説記事を10月4日付で掲載しています。要旨、次の通りです。
最大限の柔軟性
インタビューで蔡英文主席は「私は、中国本土が現状を誤って解釈したり誤認したり、台湾を圧力で屈服させ得ると考えたりしないよう願っている。台湾の如何なる政権も、民意に反した決定をなすことは出来ない」と言った。蔡氏は、中台間で経済は相補的であるよりは競合的であるとして、台湾の中国への経済依存を低下させる計画についても改めて言及した。
台湾の政権交代は、中国を動揺させ、台湾の長年の与党・国民党を脇に追いやった。馬英九前政権による宥和政策は70年前に始まった国共内戦以来の緊張を緩和したが、多くの台湾人が、国民党の対中関与政策から得るところは殆どなかったと見ている。
インタビューで、蔡氏は慎重に言葉を選んだ。現状を維持し前政権による中国との了解事項を尊重することで「最大限の柔軟性」にコミットするとした、5月の彼女の就任演説を中台双方が想起すべきである、と述べた。
蔡氏は「我々のこれまでの約束は変わらない。我々の善意は変わらない。しかし、我々は中国からの圧力に屈することはない」「我々は摩擦と対立の過去に戻ることはない」と述べた。
しかし、中国は、民進党の台湾独立支持は中国にとり好ましくないとして、就任当初から蔡英文に制約を与えようとのシグナルを発してきた。本土からの団体旅行客は減少した。中国は、蔡政権との公的対話チャンネルを停止し、台湾の国際民間航空機関への出席を阻止した。中国は、これらの措置と直接的には関連付けてはいないが、「一つの中国」が存在するとの1992年の枠組みを蔡氏が認めることを、蔡政権への関与の条件としている。蔡氏は中国が好む「92年コンセンサス」のフレーズを用いることを拒否し、インタビューでもこの表現を避けた。
蔡政権および多くの台湾人の不満の一つは、主として中国からの妨害による、台湾の外交的孤立、多くの国際機関からの排除である。台湾は、9月、国際民間航空機関の総会への出席を阻止された。2013年には台湾は同総会に出席している。蔡氏は中国に台湾の出席を認めるよう働きかけ、台湾を支持した国もあったが、「我々は国際社会からの更なる支持が必要である」と言っている。