2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年11月9日

 実際に、中国本土からの団体旅行客の減少、蔡政権との公的対話のチャネルの停止、台湾の国際機関(たとえば、ICAO:国際民間航空機関やINTERPOL:国際刑事警察機構の総会)への参加阻止など、台湾の外交的孤立に向けて蔡政権への圧力を強化しつつあります。

威圧姿勢は逆効果

 最近の中国の南シナ海、東シナ海に対する領土拡張的で独善的な対応ぶりをみると、中国がこれら両海域にまたがる台湾に対してのみ、柔軟な姿勢をとると想像することは困難です。これら三者への中国の対応は互いに連動しているように思われます。

 ただし、中国にとって台湾問題への対処が難しいのは、武力を背景とした威圧的姿勢をとることは、台湾を中国からますます離れさせてゆくかもしれないという逆効果をもたらす可能性があることです。

 他方、台湾においては、蔡英文の「現状維持」策は、本来の台湾独立論者からは必ずしも全面的に支持されず、対中国融和論者である国民党支持層からは非難されるという難しさを抱えています。それらが、最近のアンケートにおいて、蔡への支持率が一部低下したということに関連しているのでしょう。

 しかしながら、日、米、EUとのより強い結びつきを指向しつつ、中国への経済依存度を低下させ、それを東南アジアに振り向けようとする蔡英文政権にとっては、現在直面しつつある困難は避けがたい試練というべきなのかもしれません。

  
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