2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年11月1日

 元米国防長官のウィリアム・ペリーが、9月30日付のニューヨーク・タイムズ紙で、金食い虫で、最も危険な兵器であるICBMを撤廃しても、米国の核抑止に影響はない、と述べています。要旨、以下の通りです。

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ICBMは冷戦時代の遺物か?

 米国の核戦略の維持と増強のための予算は今後30年間で1兆ドルと見積もられ、これは多すぎる。通常戦略の維持やテロ、サイバー攻撃対策の予算を圧迫する。ICBM(大陸間弾道ミサイル)は冷戦時代の核政策の柱であったが、高くつくのみならず、偶発核戦争を招きかねない、最も危険な兵器の一つである。

 冷戦時代には、ICBMは潜水艦発射ミサイルや爆撃機に比べ精度が高かったが、今日では潜水艦発射ミサイルや爆撃機はきわめて精度が高く、ICBMの保険はいらない。今、国防総省は、潜水艦に対するサイバー攻撃や無数のドローンによる探知の脅威への対処に取り組んでおり、また新しいステルス爆撃機を開発している。

 米国は核兵器に過大な投資をし、新しい軍拡競争を招くのではなく、抑止に必要な水準の軍備を構築すべきである。ロシアが同様の政策をとることを勧めるべきである。米国はロシアと同等の核戦略を持つという誤った考えではなく、米国の核戦力の水準は、米国の必要に応じて決められるべきである。

 米ロはすでに核軍拡競争をした。何兆ドルも支出し、間違った安全を求めた。それは一度で十分である。我々は知恵と抑制を示さなければならない。米ロ双方にとって、新しい計画を縮小することが賢明である。

出 典:William J. Perry‘Why It’s Safe to Scrap America’s ICBMs’(New York Times, September 30, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/09/30/opinion/why-its-safe-to-scrap-americas-icbms.html?_r=0


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