2024年4月20日(土)

前向きに読み解く経済の裏側

2016年11月28日

おまけ…凶作時にコメを買い占める強欲商人も経済から見ると「役に立つ」

 江戸時代の強欲商人について考えてみましょう。凶作が予想されると、コメの買い占めに走り、価格を吊り上げて大儲けをするため、庶民がコメを食べられなくなってしまうわけで、道徳の先生からは「悪徳商人」と呼ばれています。

 今年が凶作で、例年の半分しかコメが取れなかったとします。強欲商人がいなかったら、何が起きるでしょうか? コメの値段は例年どおりですから、人々は例年と同じ量のコメを普通に食べていきます。収穫が半分しかないので、半年経過した時点でコメが食べ尽くされ、残り半年はコメがない時期が続きます。大勢の餓死者が出るでしょう。

 強欲商人がコメを買い占めたことで、コメの値段が例年の3倍になったとします。庶民は強欲商人を恨みながら、例年の半分のコメで空腹に耐えながら生活します。例年の半分のコメを、例年の半分のペースで食べるわけですから、庶民も次の収穫期まで生き延びることができます。

 重要なことは、庶民が食べたコメの量は、強欲商人がいてもいなくても同じだった、ということです。強欲商人の胃袋は普通サイズなので、強欲商人が大量に食べることはないでしょう。それから、次の収穫期までには買い占めたコメを売り切るでしょう。次の収穫期にはコメの値段が暴落することが容易に予測できるからです。

 つまり、強欲商人がいてもいなくても、庶民が食べるコメの量は変わらないのです。飢え死にする庶民が大勢いるか、庶民の貯金が全部強欲商人に吸い取られるか、という違いだけです。それなら、後者の方がまだマシだ、と言えるでしょう。道徳の先生が納得してくださるか否かは不明ですが(笑)。

  
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