海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年12月5日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 次に経済チームです。トランプ氏は米財務長官にゴールドマン・サックス出身のスティーブン・ムニューチン氏、米商務長官に投資家のウィルバー・ロス氏を起用しました。両氏とも白人の超富裕層です。さらに米メディアによりますと、ゴールドマン・サックス社長兼最高執行責任者(COO)ゲーリー・コーン氏を米行政管理予算局(OMB)局長に起用することが検討されています。仮に同氏が行政管理予算局局長に任命されますと、バノン氏並びにムニューチン氏を含めてゴールドマン・サックスの経験者が3人も主要ポストに就くことになります。

 仮に多様性に欠けた経済チームが集団思考の罠にはまりますと、通商政策において保護主義的な立場を過度に正当化するようになります。チームの求心力を維持するために、保護主義的な政策はグローバルな利益をもたらさないという反対議論を出さないようにする役割を果たすメンバーが出てくるのです。反対意見を出すメンバーに対しては同調するように圧力をかけて従わせるのです。その結果、集団思考の罠にはまったチームでは健全な議論ができないのです。トランプ新政権は、無敵幻想、過度な正当化、倫理観の軽視、極端なステレオタイプ並びに同調圧力により、かなり極端な立場をとり間違った方向に米国を導く可能性があります。

ロムニーのリスク

 トランプ新政権における国務長官の候補に2012年米大統領選挙の共和党候補ミット・ロムニー氏の名前が挙がっています。選挙期間中、ロムニー氏は不法移民対策として「自主退去」を提案しました。州の移民法を厳しくすれば不法移民は自主的に国外へ退去するというのです。16年米大統領選挙ではトランプ氏は米国とメキシコの国境における壁の建設を一貫して主張してきました。対中政策では、ロムニー・トランプ両氏とも中国を為替操作国として批判しています。不法民及び中国との通商問題に関して両氏は強硬派で共通点が存在しています。

 一方、対ロシア政策に関してはトランプ・ロムニー両氏の間にかなりの温度差が存在しています。トランプ氏とは異なり、ロムニー氏は反ロシアの立場をとってきました。仮にトランプ氏が党内融和を最優先して国務長官の職をロムニー氏に与えた場合、同氏は国家安全保障問題担当の大統領補佐官フリン氏と衝突し、ロシア政策を巡って「ホワイトハウス対国務省」の構図が明確になるでしょう。ロムニー氏の国務長官起用には高いリスクが伴っているのです。

  
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