自動車流通マーケットプレイスは買取+オークション型へ
まずは中古車販売のマーケットプレイスを見てみよう。従来、中古車取引の成り立ちは友人や家族経由で行われる個人売買から発生する。聞くところによれば、現在でも市場全体の10-20%は個人で行われているそうだ。やがて、コミュニティの中でこの売買を生業する人=中古車ディーラーが登場する。一般的には、10-20台の自動車を仕入れ、電話やWhatsAPPを使って近所の人に販売する。しかしながら、どれも車の価値を明確に把握できる人はおらず、個人の売り手からすれば、複数のディーラーを周る必要があり、かつその提示価格が本当に適正かどうか、価格が不透明性なままであった。
では、何が中古車のマーケットプライスを決めるかというと、いわゆるディーラー間での中古車取引、いわゆるオークションハウスで価格が決まってくる。このオークションビジネスは、設備投資が伴うものの、純利益率50%を叩きだす高収益ビジネスである。日本国内では、USSがシェアの3割を持ち、企業価値5000億円を誇っている。そして、オークション市場がある程度発達すると、年式や車のコンディションで価格の感覚が見えてくるため、そこから自分の利益を差し引いて、ユーザーから自動車を買い取ることを専門に行う「買取業者」が出てくる。この画期的なビジネスモデルは日本のIDOM(旧ガリバーインターナショナル)が世界に先駆けて行ったことは有名である。東南アジアの主要3カ国(タイ・インドネシア・マレーシア)では、正にこの買取業者がようやく出始めた段階であると言っていい。
さて、この複雑な自動車流通領域で革命をおこそうとしているのが、弊社の投資先でもあるマレーシア拠点のCarsomeである。ユニークなところは、ガリバーとUSS、両側面を持っている点だ。つまり、自動車を売る個人がサイトで申し込むと、社内の査定人が自動車を即座に査定、その情報を端末に入力する。面白いのは、査定終了後、端末に入力された情報が各ディーラーに通知され、オークションが直ちにスタートすることである。3日程度の期間で落札価格が決まり、落札したディーラーが車を引きとる仕組みである。通常週に一回しか行われないオークションハウスとは異なり、常にオークションが行われ、まだ従来のオークションハウスのように大規模な設備投資がいらないことが彼らの強みだ。
これまで、ネットではいわゆるクラシファイドしかなかった東南アジアの中古車マーケットに、買取+オークションというビジネスモデルで新しい風穴を開けようとしている。自動車流通の最上流をつかみ、取引が行われれば行われるほど市場価格のデータが蓄積され、売り手に対し、手軽に早く、かつ満足いく価格で自動車を販売できるプラットフォームの構築を目指している。