小一時間経過してパトカーが到着。若手の制服警官と中年の刑事が降りてきた。刑事はさすがにイタリアの警察だけあって渋いタフガイ風でジョージ・クルーニーに“ちょい似”である。
カフェの店員から簡単に事情を聴いて「明日9時にコミッサリオ・ディ・ポリツイア(警察署)に出頭すること。時間厳守。住所は後でウェイターに聞いてくれ」と刑事は下手な英語で用件だけ伝えて帰ろうとする。
目撃者探しとか現場検証はしないのか、さらには犯人の目途はあるのかと勢い込んで刑事に聞くと「ここはシシリーだぜ。あまり期待しないことだな。」と気障なセリフを残して走り去った。恰好だけで頼りにならないシシリー警察であった。
残念だが西地中海周遊はこうして“不慮の事故”によりシシリー島で突如中断となった。サルジニア、コルシカ、マジョルカなどは次回のお楽しみとして翌々日マルサーラからバロセロナ行きの飛行機に乗った。
11月26日 成田に到着。荷物は貴重品を入れたポーチと折り畳み傘だけ。服装はジーパンとシャツの上にビニール合羽という“着の身着のまま”。足元は靴も盗られたのでビーチサンダルという季節外れの軽装であった。
(完)
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