2024年11月23日(土)

個人美術館ものがたり

2010年4月19日

 見に行ったのは1月なので、今年の干支に因んで、雪村〔せっそん〕の虎の絵が出ていた。六曲一双の「龍虎図」。雪村のずるりとしてゆっくり這うような筆の動きが味わい深い。

雪村周継筆「龍虎図」(左隻) 室町時代 16世紀 根津美術館所蔵

 この回の企画で面白かったのは「茶の美術」。とくに小さな茶入とその包み袋のいろいろ。茶器の名物というのは時代とともにいろんな人の手に渡っていくもので、手にした人がそれに独自の包み袋をしつらえる。それも謂〔いわれ〕のある高価な金襴、緞子で造り上げるのが常で、それが旧蔵者の名前とともにいくつも並ぶ。日本独特の美学だ。外国では包み袋は破って捨てると思っているので、この日本の細心の美学はなかなか理解してもらえないらしい。日本では茶器の袋もそうだが、軸の絵の表装にしても、絵と同じくらいに細心の気を配って造り上げ、それがまた独自の文化となっている。ここでの丁寧な展示で見せられると、いままで見過していたものを、改めて立ち止って考えさせられるのだ。

(写真〔1-2頁〕:川上尚見)

【根津美術館】
〈住〉 東京都港区南青山6-5-1  〈電〉03(3400)2536
http://www.nezu-muse.or.jp/

初代根津嘉一郎のコレクションを、その遺志により広く公開するため、2代目根津嘉一郎(1913~2002年)が1941年に開館。所在地はもともと根津家の敷地であり、初代の生前から自邸で蒐集品を披露していたという。2009年10月、3年半の月日をかけて、隈研吾氏の設計によりリニューアルオープンした。約7000件の東洋古美術品を収蔵。ホールと6つの展示室、日本庭園、茶室、カフェからなる。ブックマークとしても使える入場券は所蔵品のひとつである中国古代の青銅器「双羊尊(そうようそん)」をかたどったもの。

〈開〉 10時~17時 *入館は16時30分まで
〈休〉 月曜(祝日の場合は翌日)、展示替え期間、年末年始
〈料〉
 [企画展]一般1,000円 高校生以上の学生800円 小・中学生は無料
       
[特別展]一般1,200円 高校生以上の学生1,000円 小・中学生は無料

◆ 「ひととき」2010年4月号より


 

 


 

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