次に、人民元国際化のゴールであるハードカレンシー化をどう達成するかである。まずは市場に任せて実力相応の為替レートを模索すると同時に、貿易決済や投資などで利用しやすいよう中国の金融市場の対外開放を本格化する必要がある。
この点で注目されるのは自由貿易試験区(上海、天津、福建、広東を手始めに現在も拡大中)だ。同区内に設立された企業は、対外投資の際に従来のような煩雑な許認可をとる必要がなく、試験区内の銀行口座は投資資金の出し入れの自由度が高いなど、改革を先取りする内容となっている。
それでも、徐永紅・中国人民大学財政金融学部教授が国際的使用状況から計算した人民元の「国際化指数」は3.6%で、IMFバスケット内の構成比率10.92%に大きく劣っている。
もう一つ注目されるのは「一帯一路」構想だ。今後構想の対象諸国においては、人民元を用いた貿易決済や直接投資が拡大し、徐々に人民元経済圏が形成されていくと予想される。
このプロセスと人民元国際化が並行して進めば問題ないが、国際化が遅れて「デファクトな人民元経済圏」だけが先行すれば、米国ドルなどの基軸通貨と切り離された経済圏となりかねない。人民元がどのようなハードカレンシーになっていくのか、今後とも注視する必要がある。
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