2024年11月24日(日)

Wedge REPORT

2017年1月18日

 このためIMOでは生態系を守るため、外航船舶に積み込むバラスト水の浄化を義務付けた「船舶バラスト水規制管理条約」を採択した。この条約はフィンランドが批准し、対象船腹量の35%以上という発効要件を満たしたため、2017年9月8日から正式に発効することになった。

 浄化装置の設置が義務付けられる船舶は新造船だけでなく、現在、運航されている既存船にも適用されるため、対象となる船舶は「全世界で約6万隻、国内の海運会社や船主がからむのは2000〜3000隻程度ではないか」(国土交通省関係者)とみられている。

1隻当たり5000万〜3億円

 では、条約の発効によって海運会社や船主などにはどのくらいの費用負担が生ずるのだろうか。これについて関係者は「船舶の大きさなどによって異なるが、1隻当たり5000万〜3億円程度ではないか」とみられており、設置されていない船舶は「それぞれの港で入港を拒否されたり、差し押さえられたりするケースも発生する」とみられている。期間は向こう5年程度で、既存船はこの間に定期検査などでの入渠の際に設置工事を行うことになる。

 しかし、海運業界にとっては新たな負担となることは間違いない。国土交通省などによると「老朽船などではこの際、スクラップに走るのではないか」(船舶産業課関係者)という見方も出ている。「スクラップが多く発生すれば、"船余り"の状態が解消されて、新たな需要が生まれ、造船不況も多少緩むのではないか」(内海造船関係者)という声も漏れる。

 一方で修繕やヤードを備える造船所や水処理装置メーカーなどにとっては「ちょっとした特需の発生」(三浦工業関係者)ということになる。三和ドックが大型ドック新設という大型投資に踏み切ったのもこれを千載一遇のチャンスとしてのものだ。

 特に大型ドックの完成によって「これまでは内航船中心だった修繕事業が近海船なども対象になり、売り上げも現状の約51億円から70億〜80億円レベルにアップする」(寺西社長)と期待を込める。


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