ソノ濁レルコト甚シ
じつは上海の街には井戸は5、6個所しかなく、しかも「ソノ濁レルコト甚シ」。そこで、否応なく川の水を容器に移し、石膏やらミョウバンを加えてゴミを沈殿させ、上澄み水を飲むことになる。山紫水明の国土からやって来た武士たちにすれば、こんな「惡水」を口にできるわけがない。だが飲まざるをえない。そこで「皆病マザル者ハナシ」ということになり、悪いことに日本から帯同した炊夫ら3人が命を落としてしまう。
たしかに繫栄する上海の衛生状態は劣悪である。これもまた孔子を生んだ国の現実であることを、彼らは改めて思い知らされたに違いない。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。