オトナの教養 週末の一冊

2017年1月27日

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東嶋和子 (とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

 ヘンリー・キッシンジャーの近著『国際秩序』(日本経済新聞出版社)では、世界は1648年のウェストファリア条約以来の構造転換期に直面しているとして、世界を突き動かす宗教という要素の蘇りが指摘されている。

 著者も、「サイクス・ピコ協定よりさらに長いスパンで俯瞰すれば、現在、世界で起こっていることは、ウェストファリア条約以降、政治を動かす要素として表舞台に現れてこなかった宗教が、再び国際社会を大きく揺るがす要素になりつつあるということだ」と説く。

 本来「中東一神教」として根が一つのはずのキリスト教とイスラム教が、なぜ憎悪に燃えて戦うのか。

 宗教という要素を歴史的に整理したうえで、エネルギーを中東に依存してきた日本が独自に取りうる外交戦略、エネルギー戦略を提起し、説得力がある。

 <中東で活動してきて実感することは、日本は湾岸産油国の人々から、日本人が思っている以上に期待もされているし尊敬もされているということだ。先進工業国の中で、日本だけが中東に対して、過去に領土的野心を持ったことがなく、「大国の横暴」に加担していない。中東のいかなる国にも軍事介入したこともなければ武器輸出をしたこともない。これは極めて重要なポイントなのだ。>

 <イスラム対キリスト教の歴史的遺恨とは異なる次元で、テロと向き合うべきなのであり、日本が取らなければいけないのは、驚くほどバランスの取れた、欧米とは異なる、「第三の道」に立った政策である。>

 知的三角測量をしながら、世界70カ国以上を歩き回ってきた著者ならではの「全体知」から導き出された重要な提起であろう。

  
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