2024年4月19日(金)

家電口論

2017年2月8日

クリーニングのポイント 〜ドライクリーニング編〜

 ドライクリーニングは、その工程中、衣類の型崩れがほとんどないため、腕の差が出にくい方法であるが、それでもポイントがある。それが「溶剤管理」だ。汚れた溶剤を使っていると、だんだん洗浄力が落ちてくる。ひどい場合には、落としたはずの汚れが洗濯物に再付着してしまうためだ。よく「あそこのクリーニング代が安いのは、溶剤を変えていないから」と言う人がいるが、そのことだ。

ドライクリーニングの投入口。扉のガッシリ感が、並ではない

 ドライクリーニングに使われる溶剤は、二種類に大別される。パークロロエチレンと石油系だ。新しい表記では、丸にP、Fで表される。洗浄力はパークロロエチレンが強いが、その分、樹脂等に対する影響もある。特に注意深く、正確に使うことが求められる。しかしパークロロエチレンは蒸留することにより、常に新しい溶剤として洗浄できる利点がある。つまり洗浄性が高く、きれいに色が冴えたようにクリーニングができるのだ。多くのクリーニング店が利用する石油溶剤の洗浄力はマイルド。使いやすいという利点がある。しかし、溶剤の汚れは、各種フィルターで取り去っても溶解した皮脂分を充分には取りきれない。また溶剤は服に付着した分、減っていくが、減った分、新しい溶剤を継ぎ足し使う方法を取る。石油系は蒸留が非常に難しいため、店により溶剤の状態はいろいろとなってしまい、冒頭のように言われることになる。

 今回取材に行った、ファッションケア・ニック(以下ニック)の玉川学園店でドライクリーニングの実態を見せてもらった。溶剤管理は、「フィルタリング」と「蒸留」で行う。洗浄後の溶剤は蒸留する度に新しくなる。さらに洗浄中の溶剤はフィルターで固形物質を取り除き、次に活性炭で色素も取り除く。これだと皮脂汚れもしっかり落とし、万が一服から落ちた染料でも問題が出る余地がない。ここまで徹底管理する。また洗濯温度は低温。夏場は溶剤を冷却しながらクリーニングを行う。これは洗濯物にダメージを与えないため。お客様の衣類のために、できることを全てしている。

 また時々ドライクリーニング後なのに、独特のニオイがする状態で戻ってくることがある。実はこのニオイ、大抵は石油溶剤の臭いだ。そのニオイがすると言うことは、乾燥が足らないのだ。油系なのでなかなか蒸発しないからだ。

 蒸留にせよ、乾燥にせよ、手間をかけることが必要だ。昔は職人の賃金を手間賃と言ったが、手間を掛けないクリーニング店は頂けない。

クリーニングのポイント 〜ウェットクリーニング編〜

エレクトロラックス社のウェットクリーニング洗濯機。見た目は…、ただのドラム式洗濯機!?

 また、ウェットクリーニングについても見せてもらった。ニックが導入しているのは、エレクトロラックス社製のウェット業務用ドラム型洗濯機と乾燥機。冒頭で書いた通り、エレクトロラックス社は、洗濯表示を決めるための標準洗濯機も作っている老舗だ。

 見せてもらった時は、ポリエステル混紡のスーツのクリーニング。水洗い「SILK(絹)」対応にセットしてクリーニング、スタート。洗剤、加工剤(柔軟剤などの総称)は、エレクトロラックス社指定のモノを使っているという。

 この後、ドラム式の乾燥機で半乾きにし、ハンガーに吊す。見ると全く型崩れしていないように見える。理由は、ウェットクリーング専用の洗濯機、乾燥機を使っていることである。当然手洗い同様といえる丁寧なタッチで洗うわけだ。また機器の性能もさることながら、エレクトロラックス社指定の洗剤、加工剤の性能もいいという。その上、ポリエステル素材に対し「SILK」。ブランド品のためよりデリケートなモードを選択しているのだ。マニュアル通りの運用ではなく、プロの目でベストを選択がポイントだ。

半乾きのスーツ。型くずれなし。これが業務用機器の威力。しかし、これでは、まだ不十分。完全乾燥させ、その後、形を再度整える

 そしてハンガーに掛けたまま乾燥できる静止乾燥機に入れる。乾燥が終了すると仕上げ、つまりアイロンというより熱とスチームで形を整える。クリーニング店の腕の見せ所でもある。しかし恐れ入ったのは、プロの道具。アイロン、アイロン台も、量販店で売っているものとはまったく違う。例えばアイロンが出すスチーム量。天井知らずのようにスゴい量をずっと出すことができる。またアイロン台も風を出したり、スチームを出したり、いろいろな工夫がされている。そうでないと、大量に持ち込まれる洗濯物がさばけない。

 しかしインタビューして、ウェットクリーニングで一番重要なのは「眼」だと感じた。布の材質はもちろんであるが、その衣類をファッションとしてキレイに見せるのは何か? ということを見抜く「眼」だ。というのは、冒頭書いた通り、現在では、衛生のためにクリーニングに出す人は皆無。となるとやはり、元々衣類が持っていた魅力がどこにあるのかを見抜けなければならないからだ。


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