前向きに読み解く経済の裏側

2017年2月27日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

会社が従業員の共同体から株主の持ち物へ変質したことが痛かった

 かつて、日本企業は従業員の共同体だと言われていました。株主のことなど考えずに利益が出れば従業員に還元するのが当然でした。上場会社が株式を持ち合っていて、お互いの会社の経営には口出しせず、配当も期待しないという不文律があったから可能だったわけですが、今では「もの言う株主」などが登場していますから、「会社は株主のものだから、利益が出たら配当するのが当然」と考える会社が主となっています。

 バブル崩壊後の長期停滞期に、「グローバル・スタンダード」という言葉が流行りました。米国経済がうまく行っているから、米国の真似をしよう、というわけで、「会社は株主のもの」といった風潮が急速に日本企業にも広まったのです。

 今でも日本企業は従業員の雇用を必死で守りますし、会社は家族といった意識も残っていますし、利益が出ればボーナスに多少の色は付きますが、利益配分の基本的な考え方は大きく変わってしまったと言えるでしょう。

 グローバル・スタンダードという言葉自体は、リーマン・ショックで米国経済が大打撃を受けると共に聞かれなくなりましたが、変わってしまった利益配分の考え方は元には戻っていません。

 余談ですが、これは労働者にとって不幸であるのみならず、景気にとっても不都合です。利益が労働者の賃上げになれば、労働者は受け取った賃金を消費に回しますから、景気が良くなります。しかし、企業が利益を配当に廻すと配当を受け取った富裕層は、それを消費せず、貯蓄するか新たな投資に廻すだけでしょう。まして、企業が「将来の配当のために内部留保する」とすれば、全く何の需要も産み出さないかもしれません。

意図せざる「同一労働・同一賃金」が実現するかも

 政府は、働き方改革を目指していますが、その中の一つに「同じ労働をしている人には同じ賃金を支払おう」という項目があります。非正規労働者が正社員と同じような仕事をしているのに時間当たりの賃金が極端に低いという現状を改めよう、というわけです。

 このまま行けば、政府がかけ声をかけなくても、非正規労働者の待遇が改善していき、若手正社員の待遇も改善していき、中年正社員の待遇は改善せず、結果として皆の賃金水準が近づいていく方向の力が働きます。市場メカニズムは政府の要請よりも強力ですから、これは期待しても良いでしょう。

 中年サラリーマンにとっては、決して愉快な話ではありませんが、恵まれていた自分たちと比べて、恵まれていなかった非正規労働者などの待遇が改善していくとすれば、日本経済にとっては望ましいことなので、我慢していただければ幸いです。

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