2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月9日

 上記社説は、核合意を破棄することはウランの濃縮という脅威の再来を意味するとして、そういう無茶な措置に踏み込まなかったことに安堵を表明しています。同時に、トランプ政権にとっての本当のチャレンジはイラク、シリア、イエメンなど周辺地域における攪乱的なイランの行動という差し迫った脅威にどう対応するかにあると主張し、具体的な脅威を掲げているわけです。
いずれの脅威への対応も簡単なことではありませんが、社説は、戦略的に優先事項を整理することが重要と指摘しています。トランプがロシアをこの地域における潜在的なパートナーと見なすこととイラン敵視は、どこかで整合性を保ち得なくなるでしょう。

トランプ好みのアプローチ

 トランプは「イスラム国」打倒のためにはアサドとも組むのかも知れませんが、それではシリアにおけるイランの支配力の伸長と固定化を許し、トランプの希望とは逆の結果となります。米国は「イスラム国」駆逐に向けてイラクに協力していますが、イラン敵視はイラクに展開する米軍をイランに支援されるシーア派民兵の標的とする危険があるでしょう。要するに、選挙戦で主張してきたことを繋ぎ合わせただけでは政策とか戦略にはなり得ないということです。1月28日、トランプはメモランダムに署名してイスラム国打倒の計画を策定するよう命じましたが、その計画が政権の戦略の質を明らかにすることになるでしょう。

 一方、イランももう少し賢くトランプ政権に対応すべきだと思います。弾道ミサイルの発射実験は安保理決議に整合的でないにしても、違反とまでは言えません。だからといって、トランプ政権をテストしてみる必要はどこにもありません。去る12月、来日したザリフ外相は講演で「核合意は多国間の合意であり、米国だけで壊すことは出来ない」と述べて、合意に利益を見出していることを明確にしましたが、そうであれば、わざわざトランプを刺激することはないのです。イラン航空はボーイング社に航空機80機(166億ドル)を発注したといいますが、この種のトランプ好みのアプローチを大切にすることが、イランにとって得策でしょう。

  
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