2024年4月24日(水)

ルポ・少年院の子どもたち

2017年3月10日

――少年犯罪の背景にはどのようなものがあるのでしょう?

金子:家庭に問題があるケースです。非行には親子関係が大きく影響します。片親のことも多いです。中には虐待を受けていたりネグレクトの場合もあります。虐待までではないにしても暴力を受けていた子の割合は多いのかなと思います。

 あとは、いじめられていた経験がある少年が多いことも先輩教官からも聞いています。

 いじめにあっているとき、学校の先生が見て見ぬふりをして何もしてくれなかったと思っていたり、先生はもともと自分のことなど相手にしてくれなかったと勝手に思い込んでいる場合もあって、それが大人への不信感となってしまうケースです。

 しかし、虐待があったから、いじめを受けていたから、片親だから、といって非行に走ってよい理由にはなりません。

――周囲に信用されていないと感じている少年たちに対して、どんな点に気を付けて接していますか?

金子:私たちは少年たちからいろいろな相談事や質問を受けます。すぐに答えられるものと、あとで時間を作ってじっくり話をしなければならないことがあります。ですが、その後、急な仕事が重なってしまい、そのまま時間が作れないでいたことがあります。

 彼らは「いいえ、大丈夫です」と言ってくれますが、心の内ではそれで傷ついていることが多いのです。だから、謝ることをおろそかにはできません。

 私たちがしっかり彼らに謝ることができなければ、指導などできるはずもありません。それに私の経験不足から誤ったことを伝えてしまうこともありますので、曖昧にしないで訂正して謝ります。

 また、彼らに問題行動があった場合に決めつけて叱らないことです。その行動を起こした背景があるからです。それを聞かずに「なにやっているんだ!」なんて怒ってしまったら、さらに大人への不信を募らせて心を閉ざしてしまうからです。

 私に非がある場合はそれを認め、きちんと謝ることで、彼らにその大切さを伝えることができます。

 自分は見られている、だからこそ非があれば謝る。ごまかさずに自分を見せる。まっすぐにやるしかありません。いい加減なことはしない、それを今一番心がけています。

――親子交流会やその他季節の行事についてお聞かせください。

金子:秋の親子交流会ではバドミントンをしました。親子が触れ合って、おんぶしたり、手を繋いだり、親子が触れ合うことの大切さを感じました。

 当日は、「変わったね」とか「人の話を聞くようになったね」とか「お互いにこれからは言葉使いに気をつけようね」という会話が聞こえてきました。

 お母さんをおんぶして、「こんなに軽かったんだ。俺はなんてことをしてしまったんだろう」と交流会のあとに言っていた少年がいました。母親の体重の軽さに驚いて、きっと自分のことで苦労を掛けたのだろうと悔やんでいたのです。


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