2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月30日

 ロシアがヨーロッパと米国に一世紀以上も前から情報工作を仕掛けていたということは知りませんでしたが、今や、デジタル技術によって高度化したその工作が常態化した「新常態」の時代に我々はあるのだと、イグネイシャスは強く警告しています。ロシアの選挙介入によって米国社会が混乱する危険があったことを考えれば、彼の危機感には理由があると思われます。米国と同盟国は結束して防御に当たるべきでしょう。

偽ニュースの流布

 フランスではエマニュエル・マクロンがロシアの工作の対象とされている可能性があります。マクロン陣営のスポークスマンは「ロシアは非常に簡単な理由でフィヨンとルペンを選択した。彼等は強いヨーロッパを望んでいない。弱いヨーロッパを望んでいるのだ。従って、国営メディアを通じて二人を後押ししている」と非難しました。マクロンはホモだという噂がSNSを通じて流布されていたらしいですが、ニュースサイトSputnikがマクロンはゲイのロビーの支援を受けているという共和党議員のインタビュー記事を掲載したことが引き金になったようで、2月6日、マクロンは「(もしマクロンがホモだという話を聞いたなら)それは逃げ出したホログラムに違いない、自分である筈はない」と集会で否定したそうです。

 「偽ニュース」の流布に対しては西側社会には相当の抵抗力があると思いますし、そもそもロシアに止めさせることが可能とも思われませんが、民主党全国委員会のコンピューターへの侵入のような妨害・破壊工作の類は阻止されなければなりません。ロシアを念頭に置いたサイバーセキュリティの協力を始めるとすれば、米国の主導に俟つことになるでしょうが、トランプに持ちかけられる性格の事案ではないのでしょう。トランプとの関係でデリケートではありますが、ティラーソンやマクマスターに提起してみることが考えられないでしょうか。

  
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