2024年12月19日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年4月6日

 中国のアフガニスタンへの軍の派遣が、ウィグル独立を掲げる過激派の封じ込めにあることは明らかです。アフガニスタンのワハン回廊がウィグル過激派の聖域化するのを防ぐのが目的でしょう。

 中国は、タリバン自体は敵視していないと思われます。昨年12月、ロシアの働きかけで、アフガニスタン発のテロリストの中央アジアに対する脅威を議論する会議が開かれ、タリバンをISとの戦いに如何に使うか、アフガニスタンでの長期にわたる戦争をどう終わらせるかが話し合われ、中国はパキスタンとともに会議に参加しました。タリバンは軍事的、政治的勢力として認められたとしてこの会議を歓迎しています。

ISの新彊ウィグル地区への進出を未然に食い止める

 中国にとって、今やアフガニスタンに進出したISが脅威で、ワハン回廊への中国軍の派遣は、ウィグル過激派対策であるとともに、いずれ起こりうるISの新彊ウィグル地区への進出を未然に食い止める思惑があるものと思われます。

 アフガニスタン情勢は混迷を極めています。米国は当初オバマが、駐留米軍を5500人まで削減する予定でしたが、タリバンの攻勢を前に削減予定を変更し、現在約8600人の米軍が駐留しています。最近ニコルソン駐アフガニスタン米軍司令官が、アフガンの現状を打破するためには米軍をさらに数千人増強する必要があると述べました。2月9日にトランプ大統領は、アフガニスタンのガニ大統領と電話で会談し、両国の戦略的協力の重要性を強調しました。トランプがニコルソン司令官の提案に耳を傾ける可能性があります。

 他方でロシアは前述のとおり、アフガニスタンの和平実現のためイニシアチブをとっており、地域での影響力の増大に努めています。この間にあって中国は、ウィグル過激派とISの封じ込めのためアフガン領内に軍を派遣する一方で、タリバンを巻き込んだ政治的解決にも関心を持っているものと見られます。

 今後アフガニスタンでは、米露中、それにパキスタンが軍事、政治の両面で情勢の安定化に向け働きかけを強めると思われます。

 しかし、アフガニスタンの現状の打開は見えません。当分の間は混迷の状態が続くものと見てよいのでしょう。

  
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