2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月31日

 ミシェル・フロノイ元政策担当国防次官が、3月1日付ワシントン・ポスト紙に、「トランプが防衛費を増やすのは正しい。その賢いやり方は次の通り」との論説を寄せ、トランプの軍事費増提案を評価するとともに、注文を付けています。フロノイの論旨、次の通り。

(iStock)

 トランプ大統領は「米国の歴史上最大の国防費増の一つ」を約束した。これは良いことであるが、どう増やすかは複雑な問題である。防衛費を増やせば能力のある軍ができるというわけではない。問題はお金をどう使うかにあるということである。

 第1:支出を即応性、兵力構成と近代化にどう割り当てるか。

 ペンタゴンと議会には、最も優先順位が高いのは即応性不足への対処であるとのコンセンサスがある。不十分な訓練時間や装備の維持・交換などの即応性問題が重要である。

 より大きい問題は、大きな軍とより良い軍の間でバランスをとることである。マティス国防長官が、「より大きく、より能力のある、もっと致命的な合同兵力」の建設が優先事項と言ったのは正しい。追加的人員や兵力構成と、技術や能力への投資への支出は、トレードオフの関係にある。海軍力の増大など、軍の増強が必要なところもあるが、トランプが選挙期間中に述べたようなあらゆる兵種の増強は資金的に可能でもないし、賢明でもない。

 追加防衛支出の多くは明日の戦場での成功につながるサイバー、電子、対潜分野、無人システム、自動化、長距離打撃、通信防護など技術面の強化に使われるべきである。

 第2:抑止と同盟の能力は強化されているか。

 米国の抑止力にとり不可欠なのは、前進配備された軍と同盟国の防衛力である。海軍艦船の配備などは基礎的予算で賄われるが、欧州再保証構想などは「海外事態対応基金」で賄われる。これらは金額的に小さいが、米が軍事紛争に巻き込まれないために重要である。

 第3:予算は軍人の信頼を得るか。

 軍は軍人を大切にすべきであり、そのためには改革がいる。軍人の健康保険、教育制度が良いことが必要である。基地の整理縮小により、経費を節約しうる。

 第4:防衛費増の財源はどこから来るか。

 トランプ政権は非防衛予算、報道によれば、国務省と国際開発庁の予算を30%以上削減するという。しかしこれは国家安全保障手段のバランスを壊す。危機を外交で防止する能力を削減し、軍への依存を増やす。マティス国防長官は中央軍にいたころ、国務省予算を十分にしないと、もっと弾丸を買うことが必要になると言った。それ以上にこのアプローチは議会を通らないだろう。税制や社会保障改革なしには、赤字の拡大になろう。

 最後にこの防衛費増がより大きな予算取引の一部になり、次の数年間の予算が予見可能にならないと、ペンタゴンは不確実性の下で作業せざるを得ず、能力向上への数年にわたる賢明な投資ができなくなる。

 トランプが防衛費増の必要を言ったのは正しいが、議会は大統領の要請を精査し、お金が賢明に使われ、国家安全保障の非軍事予算の削減がないようにするべきである。

出典:Michèle Flournoy,‘Trump is right to spend more on defense. Here’s how to do so wisely.’(Washington Post, March 1, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/trump-is-right-to-spend-more-on-defense-heres-how-to-do-so-wisely/2017/03/01/ca776f74-fe8e-11e6-8f41-ea6ed597e4ca_story.html


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