百年レストラン 「ひととき」より

2017年4月24日

»著者プロフィール
同店だけが、熱田神宮の神酒「草薙」の提供を許されている

熱田神宮に守られて発展を

 4代目・兼三(かねぞう)氏(詔子さんの父)が、熱田神宮の敷地内、東門付近に新たに出店したのだ。昭和22年(1947)か23年のことである。

 「本店は本格的な会席を出す料亭で、ハレの場として使う店。熱田神宮の方は普段使いのできる店。そのように使い分けがされて、これまで利用していただけなかった方が、熱田神宮の方でひつまぶしを知ったのです」

 兼三氏のせき子夫人は上品な名古屋弁を話し、名物女将として人気があったことも、ひつまぶしの普及に役立った。

 昭和42年、5代目の享さんは熱田神宮店を改装した。広い座敷を小上がりに直すなどして、より気軽に入れる店にして成功。先見の明があったといえる。

頭を取り腹開きにした鰻を長いまま串に刺し、備長炭の強烈な火力で焼き上げる。関東とは違って、蒸さない

 やがて、依然として高い格式を誇っていた料亭の本店にも、変革の機会が訪れた。
 「平成8年(1996)に、熱田神宮店が神宮の敷地から出ることになったんです。新たに熱田神宮南門の前に店舗を造り移転することにしたんですが、その間、一時的に営業を停止。本店だけが営業を続けました。そのため、それまで熱田神宮店を利用していた方も、本店を訪れるようになったんです」

 社用族利用の割合が非常に高い本店を、個人客も入りやすいように変えないといけない─そう考えていた時期だっただけに、これは変革のための良いきっかけとなった。

中庭の見える座敷で長焼き2,600円(税込、以下同。写真は2人前)や肝焼き950円をつまみながら、ゆるゆると燗酒を飲むのも乙なもの

 「うちの場合、主人が他所(よそ)から来たことがいいんじゃないでしょうか。3代目と5代目は婿養子です。ですから昔からの良い部分は守りつつも、おかしいと感じた部分を改めたり、新しいことに挑戦するなど、時代に合わせて変えることができました。
 熱田神宮店の移転が強運を呼び込んだわけですから、私たちは先祖代々、熱田様に守られてきたんだと思いますねえ。従業員にも恵まれ、お客様に支えられて、続けてこられました。全てに感謝しております」
 

●あつた蓬莱軒本店
<所在地>名古屋市熱田区神戸町503
(東海道新幹線名古屋駅から東海道本線金山駅へ、地下鉄名城線に乗り換え伝馬町駅下車徒歩約7分)
<営業時間>11時30分~14時ラストオーダー、16時30分~20時30分ラストオーダー
<定休日>水曜・第2・4木曜(祝日は営業)
<問い合わせ先>☎052(671)8686


写真・伊藤千晴

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆「ひととき」2016年9月号より

関連記事

新着記事

»もっと見る