「交渉の達人」トランプ
トランプ大統領は長く交渉の達人と言われてきましたが、オバマケアの代替法案に反対する共和党下院議員を説得できなかったことによって、一部に同大統領の交渉能力に疑問の声が上がっています。内政で成果を出せない同大統領は、米中首脳会談で強い衝撃を与える交渉戦略を選択しました。
習主席との晩餐会と翌日行われる本格的な交渉の間にシリア攻撃を挟んだのです。交渉を有利に進めるためのツール(道具)として攻撃を利用しました。晩餐会で和やかな雰囲気を作って習主席の面子を保ち、一旦安心させた後で同主席にシリア攻撃を伝えました。その目的は交渉前に「腕力」を見せつけ、心理的に衝撃を与え揺さぶりをかけることにあったと言えます。
次の一手
トランプ大統領はアサド政権に対して、「たくさんのレッドライン(超えてはならない一線)を超えた」と非難し軍事行動に出ました。北朝鮮にはどこでレッドラインを引くのでしょうか。
例えば、米情報機関が北朝鮮が数週間で米国本土に届くミサイルを完成させるという情報を得た時、あるいは中国が北朝鮮の核・ミサイル開発を放棄させることができないとトランプ政権が判断を下した時などがあります。訪日中の米下院外交委員会に所属するジェリー・コノリー議員(民主党・バージニア州第11選挙区)は前者はトランプ大統領のみならず米国に脅威になり、レッドラインになり得ると語っていました。
いずれにしても、トランプ大統領は、国家安全保障問題担当のハーバート・マクマスター大統領補佐官及びジェームズ・マティス国防長官に助言を求めるでしょう。両氏のレッドラインに関する助言、それに基づいた同大統領の決断は、日本を含めた東アジア全体の安全を左右することになります。北朝鮮は日本及び韓国の米軍基地を標的に入れており、トランプ政権が武力行使に踏み切った場合、「ルーズ・ルーズ(敗者・敗者)」の関係になる可能性が高いと言えます。
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