中立地帯は物売り天国
メキシコのゲートを出てから米国のゲートまで数百メートルは中立地帯である。高速道路の料金所のように10車線くらいあるが大渋滞である。検問所でメキシコからの麻薬などの違法品の持ち込みを一台一台厳密に検査しているからだ。
大渋滞の合間を縫って大勢のメキシコ人の物売りが歩き回っている。子供から中高年まで老若男女を問わず炎天下で商いをしている。多数の人間が新聞、雑誌、ミネラルウオーター、コーラ、タバコを手押し車に積んで売り歩いている。同じような手押し車を使用しているところを見ると胴元がいて売上の一部を上納させているのだろう。
他にはアイスクリーム売り、プレッツェルなどの焼き菓子やドーナッツ売りも頑張っている。
敏腕の窓拭き屋
車の窓拭き屋も十人くらい見える。そのなかで目敏く客を見つけて素早く作業して盛んに小銭を稼いでいる二人組の動きが目立った。
この二人組の商売の特徴は窓やフェンダーが汚れていてお金持ちそうなアメリカ人が乗っている車を見つけて素早く近寄りドライバーと目が合ったら直ぐに作業を始めてしまうという先手必勝作戦だ。ドライバーが断れないように機先を制する絶妙の呼吸である。
我々も米国をドライブしていてガソリンスタンドに入ると必ず備え付けのモップ、ワイパー、洗剤を使ってセルフで窓やフェンダーを掃除していた。無数の虫がフロントガラスに衝突してフロントガラスが見えづらくなるのである。また砂埃や泥はねによる汚れも日本と比較するとすざましい。
ちなみに米国の都市では昔からホームレスや乞食が小遣い稼ぎに車の窓拭きをやっており車が赤信号で停止していると寄ってくるのである。
テキサスではテキサス州法に従え
米国入管で一人当たり50セントを払ってパスポートを見せて入国審査をなんなく通過。米国税関では関税対象品目がないか質問されたのでテキーラ1本だけと回答。無税持込制限内なのでフリーパスである。
それから10メートル進むと小さな事務所があり係官が飛び出してきて「酒を一本持っているだろう」と聞く。係官はテキサス州法に基づき関税として一本あたり3ドル50セント徴収するという。アメリカ合衆国の関税法では無税のはずがなぜ勝手にテキサス州が関税を課すのか疑問に思った。50か国以上旅行しているが関税は国家のみが課税するものだと理解していたからだ。
係官に聞くと合衆国の関税法では酒類は1ガロンまで無税扱いであるがテキサス州に持ち込んだ場合はテキサス州法により別途関税を課すのだという。ちなみにメキシコから他の州に持ち込んだ場合は無税となるであろうとの説明。なるほどアメリカが“合州国”である所以だ。
⇒第7回後半に続く
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