「貴店に古酒はありや?」
食事のあとは土産のテキーラを探して歩く。テキーラやラムは貯蔵年数が多いほど芳醇な味わいとなる。古酒はアニェホ(anejo)という。比較的品揃えの良い酒屋で“Tiene usted tequila anejo aqui?”(テキーラの古酒ありや)と尋ねると50ドル近いボトルを恭しく差し出してきた。これは丁重に辞退して子細に陳列棚を観察して10ドル前後のそれらしい一本を選び出した。おそらく3年~5年寝かせたものであろうが、その晩早速モーテルでオンザロックで飲むと成熟した(mellow)な味わいであった。
国境の町は歯医者(dentista)が乱立
町の看板を見ているとやたらDentistやらDentistaが多いことに気づいた。ある雑居ビルなど一階に4軒、2階に3軒も歯医者が営業している。よく見ると中心街の通りは歯医者だらけである。ある歯医者の入口を見て納得した。「アメリカ合衆国からようこそ。ドクターは流暢な英語を話します」と看板に書かれていた。
米国では医療費が高く日本のような国民健康保険制度がない。医療保険もあるが一般的に高額である。私がニューヨークに駐在していた35年前には日系企業では会社が駐在員の医療保険(medicare)、歯科保険(dentalcare)を負担していた。そんな事情で国境を越えて歯の治療に来るアメリカ人のための歯医者が乱立しているのだ。
メキシコ土産はバイアグラ?
さらに国境に近い土産物屋通りでは半分くらいがfarmacy又はfarmaciaの看板を掲げている。これまた米国では医薬品が一般的に割高という背景からだ。米国では製薬業界は強大でありロビー活動により新薬開発のコストを回収するために薬価を高めに維持していると聞いたことがある。
ある薬局を覗いてみると所狭しと大量の薬が山積みされている。恐らく慢性病の患者が一年分くらいまとめ買いするためであろう。心臓病(heart disease),糖尿病(diabetes)関係が目立つ。特売と書かれたコーナーにはバイアグラが山積みされていた。
行きは“ヨイヨイ”帰りは“イライラ”、米墨国境通過
メキシコから米国へ渡る国境に向かって自動車の大渋滞が延々と続いている。大渋滞を尻目に土産のテキーラをぶら下げてノブさんと意気揚々と国境を跨ぐ陸橋を歩いていると前方になにやら長蛇の行列が見えてきた。
メキシコを出るのは例によってフリーパスで係官は何もせず通行人を眺めているだけである。逆に米国側ではメキシコ人の入国審査を入念にやっている。多数のメキシコ人と一緒に並んでいるので遅遅として進まない。