内戦の泥沼化の様相が深まる中、アフガニスタンの反政府組織タリバンはこのほど政府軍、駐留米軍に対して「春期攻勢」の開始を宣言、戦闘が一段と激化しそうな雲行きだ。トランプ米政権は増派も含め、アフガン政策を見直し中だが、ロシアやイランの影もちらつき、同国が”第2のシリア”になる恐れも強まってきた。
政府軍死者が2倍に
冬の間、雪に閉ざされるアフガニスタンでは例年、春の到来とともに戦闘の季節が明ける。今年もタリバンが4月28日の声明で、春期攻勢の開始を宣言した。この宣言の直前の21日、タリバンの武装グループが北部マザリシャリフ近郊の治安部隊司令部を襲撃、礼拝中の新兵ら140人以上を殺害した。
一度の襲撃で起きた死傷者では最大の被害者数となり、この責任を取ってハビビ国防相とシャヒム陸軍参謀長が辞任、国軍幹部らも更迭された。襲撃は、負傷した兵士を運んで来たように装った計画的なもので、実行したのはタリバンの“最凶”組織「ハッカニ・グループ」の選抜隊と見られている。
こうした襲撃や交戦などでアフガニスタン軍の死者は毎年拡大する一方で、2016年は一昨年の2倍以上の6700人が犠牲になった。民間人の死傷者も1万1418人と急増した。タリバンは現在、国土の50%以上を支配、アフガニスタンは米軍の支援と国際的な援助でなんとか国家の体裁を維持しているのが現実だ。
アフガンに駐留していた米軍中心の国際治安部隊は最大14万人に上ったが、2015年までに一部米軍を残して大半が撤退した。現在は約8500人の米軍が残留し、政府軍の訓練、助言などとともに、過激派組織「イスラム国」(IS)や国際テロ組織アルカイダに対するテロとの戦いを続けている。
米軍はアルカイダの潜伏するパキスタン国境との部族地域に対する無人機空爆作戦を続行する一方で、ISの拠点のある東部ナンガルハル州での掃討作戦を強化。4月中旬には、「すべての爆弾の母」と呼ばれる通常兵器では最大の大型爆風爆弾を投下し、ISの地下トンネル網を破壊した。しかしその直後の作戦では、米兵2人が死亡するなど被害も出ている。
トランプ政権の本音は1日も早いアフガニスタンからの軍撤退だろう。しかし今、米軍が手を引けば、同国がタリバンに取って代わられる可能性が強い。現状のままでも、タリバンが一段と勢力を拡大、ISもテロを活発化させて内戦が泥沼化、“第2のシリア”に陥りかねない。
特にISは拠点のあるナンガルハル州から活動範囲を拡大し、3月には首都カブールの国軍病院で自爆テロを実施、49人を殺害した。ISは最盛期の勢力からは弱まっているものの、依然1000人以上の戦闘員がいると見られている。
こうした状況の中で、トランプ政権は早急なアフガン政策の見直しを迫られており、4月には、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)、マティス国防長官らが相次いで同国を訪問、ガニ大統領らと会談した。