ファッション業界関係者で埋まった会場
彼女の服はファッションという域を越えたアート作品に見えるが、面白いのは彼女自身が過去も現在も自分はアーティストではない、と明言していることだ。
前述のNYタイムズ紙コラムニスト、シネイアー氏に「でも結局は、やはりあなたはアーティストなのでは」と聞かれると、通訳を通して「違う」と答え、仕草でそのことをきちんとメモに書いておくように、と促したという。
自身はビジネスウーマンであり、多くの従業員に対して責任を抱えている、と一貫して主張し続ける川久保氏。そのビジネスのフラッグシップとして、彼女のクリエイティブな欲求を自由に表現してきた総集編が今回のThe Art of In-Betweenなのである。
一般消費者用のブランドは、洋服から香水、バッグ、財布など幅広いラインを持つコム・デ・ギャルソンだが、このエキジビション会場の出口にも商品をいくつか並べたミニブティックが設置されていた。
ハウスブランドの一つ、プレイはハートに目がついたデザインがトレードマークのカジュアルブランドだが、Tシャツ1枚120ドルほどのお値段である。
こういった商品も販売しながら、コム・デ・ギャルソンが過去40年ほども世界のトップブランドであり続けたのは、独自のクリエイティブな視点を持つ「ビジネスウーマン」川久保氏の揺らぎないカリスマ性が、常にトップに存在していたからに違いない。
世界のファッションの中心地の一つであるニューヨークは、FIT(ファッションインスティチュード・オブ・テクノロジー)などファッションデザイナー養成学校も多く抱えている。
この会場でも一目でファッションデザイナー志望、ファッション業界関係者とわかる個性的なファッションを身につけた若者たちが大勢訪れて、熱心に写真を撮影している姿が目についた。
このエキジビションは、9月4日まで開催されている。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。