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初瀬:お父さんがIBMにお勤めになっていたので、小さい頃からパソコンには慣れ親しんでいたわけですよね。グリズデイルさんにとっては、これがあれば、いろいろなことが出来る。世界と繋がれる。そんな思いがあったのでしょうか。
グリズデイル:そうですね。卒業後、地元で一度就職して、その後、日本の「希望の車いす」というNPO法人の求人募集があったので応募しました。使われていない車椅子を綺麗にして、アジアの各国に送る活動をしているのですが、私はホームページやデータベースを扱う仕事をしていました。
初瀬:日本に住むとなれば家を借りなければならず、福祉制度の手続きなども複雑でしょうから、不安も大きかったのではないですか。
グリズデイル:日本の福祉の制度に入るまでは時間が掛かりますので、半年間くらい日本人の友人が、障害者の自立支援センターと連絡を取りながら、住まいのことや様々な手続きを進めてくれました。
その後、日本には就労ビザできました。福祉制度は住まいのある区が行っているので、外国人であっても区の住民であれば福祉サービスが受けられることを知ってびっくりしました。
初瀬:日本に住み、日本のNPO法人で働き、その後、どういった経緯で社会福祉法人江寿会・アゼリーグループに転職をされたのですか。
グリズデイル:前の職場の契約が終わったときに、このまま日本に住み続けたいと思って、いろいろ仕事を探しているときに「働けませんか?」とある英会話教室を訪ねた縁から、「アゼリー江戸川」を紹介され、こちらにお世話になることになりました。
その方は英会話の先生で「アゼリー江戸川」でも働いている方だったのです。
初瀬:もしも私がカナダに行って就職先を探すことになったら、こんなに行動力があるかなと考えてしまいますね。私は視覚障害ですが、歩くのに不自由はありませんし、電話も苦にはなりません。ですが、グリズデイルさんは電動車椅子なので、どこに行くにも制約を受けてしまう。だから、その行動力はすごいですよ。カナダから日本に来て、こちらで仕事を探すんですから、並大抵の努力ではありません。
ご縁が生まれたのも行動しているからなんです。動いていれば必ずリアクションがあります。
グリズデイル:私は両親から「夢は追いかけ続けたほうがいい」と言われて育ちました。それに「他の誰かにできることはジョシュアにもできるよ」と教わってきました。もちろん同じような時間や、方法ではないかもしれないけれど、私なりのやり方で同じようにできるんだということです。
夢を追いかけて、いつか私が満足したら、両親のもとに帰ってくるんじゃないかと思っていたみたいですが、日本に帰化したことでカナダにはもう戻らないかなと寂しく思っているようです。
初瀬:国籍を変えるって大変なことですよね。なぜ日本人になりたいと思ったのですか。
グリズデイル:中途半端なことは嫌いです。「アゼリー江戸川」で長く勤めたいと思っているので、ビザを更新するのではなく、永住ビザでもなく、選挙権を有して日本の社会の一員になりたいと思ったのです。
初瀬:選挙権を持って、日本人として税金を払い、すべてのことを日本人として行いたいということですね。