解体 ロシア外交

2017年5月31日

»著者プロフィール

ロシアよりも中国と関係を深める中央アジア諸国

 このような状況に鑑み、ロシアの研究者の中には、「一帯一路」構想は達成指標がないが故に、中国が軽微なものも含むあらゆる結果を「一帯一路」の成果として喧伝していることから、「一帯一路」そのものの意味に疑問を呈するものもいる。「一帯一路」がそもそも大した成果が上がっていないものなら、「ユーラシア経済連合」との連携で良い成果が出ないのは当たり前だという議論である。

 確かに、「一帯一路」の経済パフォーマンスは決して良いとはいえない。たとえば、中国の投資家は融資するプロジェクトをかなり選り好みして決めるため、実際の融資額は期待を下回っており、昨年では中国の「一帯一路」」関係の投資額は、3年ぶりに減少した。そして、中国の投資家からすると、ロシアが提案するプロジェクトはあまり魅力的に感じられず、結果、対露投資のパフォーマンスは悪くなるのである、そのため、ロシアの専門家の中には、ロシアが主導する「ユーラシア経済連合」は素晴らしいが、中国が自国の経済利益のみを考慮する自己的な行動をとるが故に、連携においてはロシアの実入りが小さいのだという議論を提示するものもいる。

 さらにロシアの重要な「勢力圏」であり、中国が経済的に台頭してくるまではロシアが政治・経済の影響力を独占的に維持してきた中央アジア諸国が、ロシアよりむしろ中国との関係を深めていることもまたロシアにとっては許容しがたい問題だ。「一帯一路」の国際会議でも、中国と中央アジアの関係強化は顕著に見られた。習主席はカザフスタン、キルギスタン、ウズベキスタンの各国首脳と会談し、中央アジア諸国との関係強化を強調した。

 これら会談の中で、例えば、カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は、カザフスタン鉄道がカザフスタンと中国の国境にあるコルゴスの輸送拠点の49%を譲り受けるという合意に調印した。これはカザフスタンが重要物流拠点として高い戦略性を持つと見なされるようになったことの証左である。また、ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領も中国との経済関係の強化を強く求めており、今回の会談では最大200億ドルの協力協定も締結した。中国は、ウズベキスタン東部のフェルガナ盆地と、残りのウズベキスタンを結ぶ最初の唯一の鉄道に対する共同出資をすることを約束した。この連携は中国製品を中央アジアに輸出するために極めて重要である。

 その鉄道が完成した現在、中国は戦略的に1億7500万ドル相当の高速道路プロジェクトにも取り組んでいる。 

単純ではない中露関係

 このように中国とロシアの「一帯一路」と「ユーラシア経済連合」の連携への期待は高いとはいえ、実際にはあまり良い結果が出ておらず、また、地域覇権を維持したいロシアにとっては中国の勢力拡張は決して望ましくない状況だ。

 米国への対抗軸という揺るがない共通利益を持っていることを背景に、中露関係が緊密であることは間違いないとはいえ、両国のメガプロジェクトにおける連携は、ロシアの期待とそれに応えていない中国という図式、ロシアの「勢力圏」に迫る中国の影響力など、両国関係の判断も単純ではない。このような状況の中で、7月には習主席の訪露が予定されている。中露両国は世界大国のイメージをどのように守っていくのか、また現実にどのような成果を出せるのかは今後も注目される。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る