解体 ロシア外交

2017年5月31日

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メガプロジェクトの連携、裏切られるロシアの期待

 そして、会議の期間中、中露間の大型プロジェクトが多数成立した。

 まず、中露両国がロシア極東及び中国北東部の開発支援のために、総額100億人民元(約145億ドル)の共同地域開発協力投資ファンドを設立するという計画が発表された。

 加えて、ロシア石油最大手ロスネフチと中国石油天然ガス集団(CNPC)は両者間の協力の効率化向上を目指すための合同調整委員会の設立に関する取り決めに調印したことが発表された。

 また、ロシア天然ガス最大手ガスプロムのミレル社長とCNPCの王会長は、地下ガス貯蔵、電気産業、道路インフラなどの分野での協力深化に関する文書に調印した。

 このように、中露関係のプロジェクトは、地域発展を目指すものやエネルギー関連の協力強化が主軸となっており、経済規模も大きい。

 その一方で、両国のメガプロジェクトの連携に関し、ロシアの期待が裏切られているのもまた事実だ。

 前述の通り、プーチンは度々中露のメガプロジェクトの連携が有益であると国内外に訴え続けて来たが、実際のところ、プーチンが本気でそう思っているとは考えづらい。プーチンの連携を高く評価する発言の背景には、むしろ、連携からの恩恵が少ない現実への批判を避けるためだとも考えられる。実は、ロシア側が「一帯一路」との連携に期待していたものと実態はかけ離れており、プーチンをはじめとした当局やオリガルヒ(財閥)の懐疑心は強まっていると言われる。

 そのような疑念を高めているのが、「一帯一路」と「ユーラシア経済連合」の連携を象徴するプロジェクトとして発足したモスクワ・カザン高速鉄道計画におけるロシアの失望である。この鉄道計画は、いずれモスクワと北京が鉄道で結ばれるとされる高速鉄道の基礎となるとされ、最初の了解覚書では、同鉄道はシベリア地域を通るとされていた。しかし、のちに同鉄道の線路はロシアのほとんどの地域を通過せず、カザフスタンの首都アスタナから新疆を通過して、所要時間が3分の2になるように変えられたのである。中露協力のモデル計画とされていたプロジェクトの結果がこのような惨憺たるものであることは、ロシアにとって大きな痛手であった。

 しかも、これのみならず、中国と欧州を結ぶインフラの多くはロシアを全く通らず、中央アジアと南コーカサス地域を通過しており、ロシアは陸運の利益を得られないのだ。さらに、そもそも陸路よりも海路での運輸の方が50%以上安価になるため、所要時間は陸路の方が早くなるとはいえ、経済合理性の観点から、中国・欧州間の貨物輸送で陸路経由が占める割合は1%以下となっている。このことから、ロシアが陸の現代版「シルクロード」計画から得られる利益はほとんど想定できないのである。

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