2023年1月28日(土)

Wedge REPORT

2017年6月2日

»著者プロフィール
閉じる

磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 人手不足がバブル期並みになっている中で、働き手として外国人の受け入れは待ったなしだろう。安倍晋三首相は国会答弁で「いわゆる移民政策は取らない」と繰り返し、それが現在の政府の方針の根幹になっている。

 「単純労働を受け入れない」としてきた理由は2つある。ひとつは日本人の雇用を奪う懸念があると考えられてきたからだ。もうひとつは、単純労働者として受け入れると、やって来る外国人の「質」が下がるのではないか、というもの。

 現実には、前者は日本人だけでは手が足りないところまで来ており、雇用を奪うという話にはならない。後者はひとえに、受け入れ制度をどうするかの問題で、現状のように不法滞在や目的外の外国人が働いている方がむしろ、「質」の低下を招いている。

 国の「単純労働は受け入れない」という方針をかいくぐるために、これまでも様々な「便法」が取られてきた。その最たるものが「技能実習生」で、日本の技術を海外に移転するためという「建前」の下、日本人では賄えなくなった工場や農業で単純労働に使ってきた。ここへ来て急増しているのが、留学生という「建前」だ。

 だが、そうした「本音」と「建前」の使い分けは後々禍根を残す可能性がある。内閣官房参与で元経済企画庁長官の堺屋太一氏は、政府の会議などで、繰り返し移民解禁の必要性を訴えているが、本音と建前の使い分けは危険だという。日本にあこがれてやって来たにもかかわらず、労働の現場で目にするのはいわゆる「3K」。キツイ、キケン、キタナイ仕事を外国人に押し付けている実態を知る。「日本の悪いところだけを経験して帰った若者たちは、決して親日的にならず、日本を嫌いになってしまう」というのだ。

 「長期にわたって日本に住む『定住外国人』の受け入れ政策を、国として明確に打ち出すべきだ」と語るのは元警察庁長官でスイス大使を務めた國松孝次氏。会長を務める一般財団法人「未来を創る財団」で、定住外国人受け入れの提言をまとめ政府に働きかけている。16年末にまとめた第2次提言では上記の5点を求めた。

 國松氏は言う。「いくら労働者として受け入れると言っても、入国した瞬間に生活者なわけです。日本にやって来る外国人が生活者としてきちんと日本になじんで、日本社会を支える役割をきちんと果たしてもらう、そのための制度整備を急ぐべきです」

 つまり、目先の人手不足を補うために、様々な「便法」を使って、労働力としてだけに目を向けて入国を許すのは問題が大きいというのだ。

 國松氏らは政府の担当省庁に提言書を持ち歩いた。昨年12月20日には厚生労働省に塩崎恭久大臣を訪ねたが、その際、塩崎大臣から「なぜ、警察OBの國松さんが外国人受け入れに積極的なのか」と聞かれたという。外国人受け入れを増やせば、治安が乱れるというしばしば語られる反対意見を考えれば、警察は移民NOなのではないか、というわけだ。


新着記事

»もっと見る