広島県の山間部にある安芸高田市では、外国人を「いつか帰る人」ではなく、「共に暮らしていく人」として受け入れる取り組みをはじめている。人口減少が続くなかで、外国人を受け入れていかないと、町自体が消滅してしまうという危機感からだ。2004年に合併した当初3.4万人いた人口は、2.9万人まで減少している。
この町には留学生はいないが、外国人技能実習生、日系人など合わせて576人ほどの外国人が暮らす。彼らの生活をサポートしたり、地元で行われるイベントや、祭りへの参加を促したりという取り組みを2010年から続けている。実際に町の祭りを訪ねると、技能実習生たちが出店を出すなど、周囲にとけ込んでいる様子だった。
安芸高田市の浜田一義市長は「言葉は通じなくても、『(外国人に対して)あなた方を大切する』という気持ちを持つことが大事」と話す。以前、町のプログラムで海外ホームステイをした中学生に「言葉で苦労しなかった?」と尋ねたところ、「意思を持っていれば、言葉が通じなくても相手に伝わります」と言われて、感心したという。「外国人ウェルカム」という姿勢を町の人々が共有することによって、外国人も周囲に馴染みやすくなる。
技能実習生の場合、3年で帰らなければならないが、それでも「安芸高田でいい思い出を作って帰ってもらいたい」と、ファン作りをしている。
これは近い将来、定住外国人を受け入れるべく国も制度を変えざるを得ないとみているからだ。浜田市長は「我々は先取りしているだけです。じきに他の町もこの問題と向き合わなければならないようになります」と話す。
急増する留学生アルバイト
人口減少に長らく直面してきた地方に追いつく形で、都会でも人手不足が目立つようになってきた。
東京で、中国、台湾人など外国人材の派遣業を営む会社社長は「インバウンド対応として語学ができる人材が欲しいということではなく、『とにかく人手が欲しい』というニーズが多い」という。
いま、日本で起きているのは、空前の人手不足だ。有効求人倍率は1.45とバブル期の水準に戻った。少子高齢化が状態化するなかで、日本人だけでは、回らなくなった現場が増えている。
ただ、それはこれまで都会で暮らす人々の目につかなかっただけで、製造業、農業といった現場では、20年以上前にスタートした技能実習生制度を活用して、人材確保をしてきた。それがコンビニ、居酒屋、外食チェーンなど、都会人の目につく場所でも、外国人労働者が増えてきた。
この背景にあるのが留学生の急増である。留学生は週28時間までであれば、就労が許可されている。技能実習生の場合、働くことのできる業種が限られるため、レジ打ち等の仕事はできないが、留学生の場合、基本的にそのような制約がない。