オレゴンのITエンジニア、ジョーのアメリカン・チャーチ歴史講座
ルート66の次の旅は2016年6月~9月の真夏の北インド周遊であった。ヒマラヤの山麓を三か月間ぶらぶらした。ある山麓の古い寺院の宿坊でジョーという米国人と一緒になった。ジョーは37歳のオレゴン州立大学でITを専攻したエンジニア。
ジョーとは同じ宿坊で3日間一緒であったが、やることがないのでほとんど朝から晩まで議論していた。ルート66の旅では米国の教会がヨーロッパの教会と大きな違いがあることを実感したが、どうしてそうした歴然とした違いが出来上がってきたのか疑問をジョーにぶつけてみた。
ジョー曰く、「歴史的経緯背景が全く違う。カトリック教会は中世以降フランス革命まで王侯貴族と一体となって国家の支配体制を支える役割を果たしていた。封建領主同様に教会は徴税権を持っていた支配者だ。ところがフランス革命以降は市民の力が強くなり政教分離の考え方が広まりフランス、スペインなどで教会の徴税は禁止されていった。さらに産業革命により都市化が進むと都市住民の間では教会離れが進行して現在に至っている。つまり西欧では大衆が教会支配から離れてゆくというのが歴史上の大きな流れだと思う。
他方でアメリカでは西部開拓は主としてプロテスタントの白人農民たちが担った。人口密度の希薄な広大な米国中西部では開拓時代以来日曜礼拝は人々が集い交流し団結する貴重な機会であった。プロテスタントではカトリックと異なり牧師と信者は対等の立場というのが大原則だ。それゆえ人々が協力して教会を運営してきた。だから教会は現在でも地域住民のコミュニティーの役割を維持している。
つまりアメリカでは大衆が教会と共に地域社会を発展させてきたという歴史があるんだ。そして20世紀以降発達したショービジネスの手法を応用して日曜礼拝をできるだけ人々に親しみやすくキリスト教を理解できるようにエンターテイメント的要素を取り入れたのが現代の日曜礼拝だよ。」
⇒(第13回に続く)
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