2024年4月25日(木)

サムライ弁護士の一刀両断

2017年6月15日

使用料が発生する場合・しない場合

 では元に戻って、楽曲の演奏に使用料が発生する場合とはどのような場合でしょうか。

 まず、著作権法上、音楽の著作権者は「公に演奏する権利を専有する」とされます(演奏権。著作権法22条)。噛み砕いて言えば、著作権者は自分の楽曲について「演奏させるか、させないかを自分だけが決めることができる」権利を持っているということです。

 このため、誰かが他人が作詞・作曲した曲をコンサートなどで、権利者に無断で演奏すること(あるいは使用料を支払わずに演奏すること)は、著作権侵害にあたる可能性があります。

 ただし、著作権侵害の対象となるのは、演奏が「公に」なされた場合に限られます。ここでいう「公の演奏」とは、「不特定または多数の人に、直接見せたり聞かせたりするために演奏すること」をいいます。

 一人で練習する場合や、家族内で演奏するような場合は、不特定の相手や多数の人に聞かせるわけではないので、「演奏権を侵害した」ということにはならないでしょう。

 また、著作物を「公に」演奏する場合であっても、営利性がない場合(①営利を目的としないこと、②観客等から対価を受けないこと、③演奏者に報酬が支払われないことの3つの要件をすべて満たす場合)には、たとえ多くの人に聞かせる目的があっても著作権者に承諾なく演奏することができ、使用料の支払いの対象とはなりません。(著作権法38条)。

 例えば、文化祭の出し物として無料のコンサートを行う場合は、「公の演奏」ではあるものの、通常は「営利性がない」と思われますので、使用料を支払う必要はないでしょう。

 たまに「そのうちJASRACはお風呂場で鼻歌を歌うだけでも使用料を取りに来るんじゃないか」という皮肉を目にしますが、通常は誰かに聞かせる目的はないでしょうし、また、営利性もないと思われるので、使用料の取立てにあう心配はなさそうです。


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