2024年11月21日(木)

サムライ弁護士の一刀両断

2017年6月15日

「音楽文化の普及発展に寄与」するのは利益の確保か、次世代の育成か

 ここで少し視点を変えて大局的に見た場合、この問題は「音楽教室から使用料を徴収することが、音楽文化の発展に貢献するといえるか」が隠れたテーマではないかという気がします。

 JASRACの究極的な目的は、「音楽文化の発展」です。このことは、JASRACの定款にも「音楽の著作物の著作権を保護し、あわせて音楽の著作物の利用の円滑を図り、もって音楽文化の普及発展に寄与することを目的とする。」と書かれています。「著作権の保護」だけがJASRACの目的ではありません。

 そして、音楽教室は、次世代の音楽の担い手を育成するという、文化の発展にとって重要な役割があります。

 今回の争いは、音楽文化の発展のために、著作物からの利益の確保と次世代の育成のどちらを優先すべきなのかの対立であるともいえそうです。

 今回、JASRACは、法解釈に微妙な部分がある中、あえて「音楽教室内の演奏も公の演奏であり、営利性がある」として使用料を徴収する方針を取ったということになります。

 個人的な意見を言わせて貰えれば、音楽市場全体がシュリンクしているといわれ、次世代の育成がますます重要になってくるのに対して、既存の資産からの利益の獲得に比重を置きすぎているのではないかという気がしてなりません。

 「音楽文化の発展」という究極的な目的のため果たして何が重要か、十分な議論を尽くす必要があると考えます。

  
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