田部康喜のTV読本

2017年6月22日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 スタジオのASD障害者である、片岡もこう証言する。

 「人が多い喫茶店などで音声がうるさいので聞き取れない。小さいころ、友達のそばにいるのが辛くてひとりでいることが多かったのも、いまから思えば音で説明がつく」

 やはり同じ障害者の綾屋も同様である。

 「情報のインプットが多くて、自分の考えをまとめられない」

 ADHD(注意欠如・多動症)とLD(学習障害)については、小学校を舞台にしたアニメによって、障害者側からの認識をわかりやすく伝えた。

 「こんな子がいたことを覚えていますか?」とナレーションが入る。

 忘れ物が多くて、整理整頓が苦手。かつ授業中によそ見をして何度も注意を受けるが直らず、やる気がないようにみえる。これは、ADHDである。

 一方、簡単な文章を読むことができずに、つっかえる。周囲がそれに気づくと、さらに緊張して読めなくなる。これは、LDである。

 ADHDの子どもはどのように世界がみえているのか。授業を最初は聞いているが、壁に貼られた音楽会のポスターが気になる。さらに、そこに描かれているト音記号がどうしてそう呼ぶのか気になる。

 LDの子どもは、文章の字の流れをつかむことができない。せいぜい3文字ずつしか認識できない。それで、何度もつっかえるのである。

「二次障害」がもたらす深刻な問題

 さらに、発達障害の問題が深刻である理由は、「二次障害」が生じて障害者が社会参加できなくなる可能性があることである。

 二次障害には、うつ、不安障害、強迫性障害、統合失調症、そううつ病(双極性障害)、PDSD(心的外傷後ストレス障害)、不登校、ひきこもりなど、多岐にわたる。

 英国の調査によると、ASDの障害者の70%が二次障害を生じていると推定されている。

 ASDのリラさん(33)は、8年前にそううつ病(双極性障害)と診断された。無職で就労支援を受けている。これまでの職場の記録によると、食品工場は音と匂いが耐えられなくなって退社、事務職は人間関係を築くことが難しくなって辞めた。

 リラさんはいう。

 「普通の基準とか、社会が求める人材とはなにか、なにが普通でなにが変なのかわからない」

 発達障害の障害者の特性を知ったうえで、雇用しようという動きも欧米や日本でも広がっている。スタジオの綾屋はいう。

 「2倍の正確さで8時間働けば、壊れる。働く時間を半分にするとか、疲れが出やすいということを考えに入れなければならない」

 番組が描いた、障害者の内面から問題をみつめた姿勢は、社会の共感を生む。そして、障害者が受け入れられることにつながるだろう。(敬称略)


  
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