スタジオのASD障害者である、片岡もこう証言する。
「人が多い喫茶店などで音声がうるさいので聞き取れない。小さいころ、友達のそばにいるのが辛くてひとりでいることが多かったのも、いまから思えば音で説明がつく」
やはり同じ障害者の綾屋も同様である。
「情報のインプットが多くて、自分の考えをまとめられない」
ADHD(注意欠如・多動症)とLD(学習障害)については、小学校を舞台にしたアニメによって、障害者側からの認識をわかりやすく伝えた。
「こんな子がいたことを覚えていますか?」とナレーションが入る。
忘れ物が多くて、整理整頓が苦手。かつ授業中によそ見をして何度も注意を受けるが直らず、やる気がないようにみえる。これは、ADHDである。
一方、簡単な文章を読むことができずに、つっかえる。周囲がそれに気づくと、さらに緊張して読めなくなる。これは、LDである。
ADHDの子どもはどのように世界がみえているのか。授業を最初は聞いているが、壁に貼られた音楽会のポスターが気になる。さらに、そこに描かれているト音記号がどうしてそう呼ぶのか気になる。
LDの子どもは、文章の字の流れをつかむことができない。せいぜい3文字ずつしか認識できない。それで、何度もつっかえるのである。
「二次障害」がもたらす深刻な問題
さらに、発達障害の問題が深刻である理由は、「二次障害」が生じて障害者が社会参加できなくなる可能性があることである。
二次障害には、うつ、不安障害、強迫性障害、統合失調症、そううつ病(双極性障害)、PDSD(心的外傷後ストレス障害)、不登校、ひきこもりなど、多岐にわたる。
英国の調査によると、ASDの障害者の70%が二次障害を生じていると推定されている。
ASDのリラさん(33)は、8年前にそううつ病(双極性障害)と診断された。無職で就労支援を受けている。これまでの職場の記録によると、食品工場は音と匂いが耐えられなくなって退社、事務職は人間関係を築くことが難しくなって辞めた。
リラさんはいう。
「普通の基準とか、社会が求める人材とはなにか、なにが普通でなにが変なのかわからない」
発達障害の障害者の特性を知ったうえで、雇用しようという動きも欧米や日本でも広がっている。スタジオの綾屋はいう。
「2倍の正確さで8時間働けば、壊れる。働く時間を半分にするとか、疲れが出やすいということを考えに入れなければならない」
番組が描いた、障害者の内面から問題をみつめた姿勢は、社会の共感を生む。そして、障害者が受け入れられることにつながるだろう。(敬称略)
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