2024年12月23日(月)

親子で楽しむ展覧会 2010

2010年8月5日

「夏休みに、子どもと楽しめる近場の良いスポットはないだろうか…」と頭を抱えているお父さん・お母さんに、親子で楽しむ都内の展覧会をご紹介。第1回目は新宿の損保ジャパン本社にある、『損保ジャパン東郷青児美術館』。開催中の『トリック・アートの世界展』には、子どもも楽しめるだまし絵や不思議な作品がいっぱい。美術館の学芸員さんに、おすすめポイントや親子での楽しみ方をうかがいました。

 新宿の高層ビル群の一角にある、損保ジャパン本社。その42階に、美術館があるのをご存知だろうか。かの有名なゴッホの『ひまわり』が常設展示されている「損保ジャパン東郷青児美術館」では、夏休み真っ只中の今、『トリック・アートの世界展』が開催されている。

 昨年には、Bunkamuraザ・ミュージアムで『奇想の王国・だまし絵展』が開催され、連日大盛況だった。ちなみにトリックアートとは、今回の美術展のパンフレットの言葉を借りれば、「思い込みによる錯覚や見落としなど、“視覚の盲点”をついたアート」である。1つの作品だが、視点を変えることで違うイメージに見える「ダブルイメージ」や、実物と見間違うほどリアルに描写された「トロンプ=ルイユ(だまし絵)」などがあるが、そんな難しいことは知らずとも、大人も子どもも理屈抜きで楽しめる展覧会になっている。

ゴッホの自画像?

森村泰昌 『肖像(ヴァン・ゴッホ)』 1985年 高松市美術館

 「美術は難しそうで…」と敬遠する前に、右の絵を見てもらいたい。「これはゴッホの自画像…?」と思いきや、そう、よく見るとゴッホではない。現代美術の気鋭、森村泰昌氏の有名な作品だ。これは、ゴッホの自画像の写真に色を塗ったり粘土で加工したりして作られた。「ゴッホのようでゴッホでない。そして、絵画のようで写真である、というダブルのトリックアートです」という、学芸部・江川均氏一押しの目玉作品である。

 「現代美術」と言われてしまうと敷居が高いが、今回の展覧会では、現代美術作品を「トリックアート」という切り口で集めたことによって、今まで美術に興味がなかった人や子どもでも親しみやすくなっている。損保ジャパン東郷青児美術館は、特に夏の企画展では「大人も子どもも楽しめる」をテーマに掲げており、今回の『トリック・アート展』もまさにその通りの出来ばえとなっているようだ。

 その証拠に、開館後、会場はすぐに子どもたちでいっぱいになった。親子だけでなく、一家総出で見学をしている人たちも少なくない。目を輝かせながら不思議な世界を食い入るように見つめるのは、子どもだけでなく親も同じ様子。「発見の連続」のトリックアートを親子で楽しんでいただきたい。

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