2024年4月23日(火)

中東を読み解く

2017年6月29日

山積する難題

 大河チグリス川で分断される人口200万人のイラク第2の都市はこの8カ月間の戦闘でメチャメチャに破壊された。イラクがこうした市の再建の前にまず取り組まなければならないのは、今後の再建の方針や治安回復・維持の方針を決める「暫定評議会」の発足だ。

 米国が治安回復で一番重要視している点がシーア派主体のイラク治安部隊に警察権限を与えないということだ。スンニ派の都市であるモスルの住民の中にはISに協力をしていたと疑われる多くの人たちがおり、イラク治安部隊が報復のため拷問や処刑を実行する懸念が強いからだ。

 このため治安はスンニ派の警察部隊に担わせる方針だが、警察官の人選から始めなければならない。治安とともに焦眉の急は、地雷や仕掛け爆弾、不発弾など爆発物の処理だ。爆発物の処理が終わらなければ、市のインフラ、水、電気の復旧、がれきの撤去と道路の整備などもままならない。

 モスルを脱出した住民約70万人の帰還も必要になるが、家を失った人たちも多く、そもそも帰還できるかどうかも分からない。このほか、食料支援、医療や健康問題の手当、病院の再開、教育や学校の開始などを早急に進めなければならない。

 こうした再建には何十億ドルも必要と試算されており、イラク単独でまかなうのは無理で、当然国際的な援助が必要になってくる。日本を含めた西側先進国は1年ほど前からモスル以後に向けたスキームを議論してきており、日本にも相当の支援が求められるのは必至。本当に大変なのはこれからなのだ。


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