2024年12月23日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年2月3日

 民主党の小沢一郎幹事長が、自身の資金管理団体「陸山会」をめぐる土地取引事件で検察当局と攻防を展開、中国共産党・政府も注視している。小沢氏は2009年12月、民主党所属国会議員140人以上を含む総勢640人もの大訪中団を引き連れて北京で胡錦濤国家主席と会談。さらに来日する習近平国家副主席と天皇陛下との会見を望んだ中国の崔天凱駐日大使の要請を受け、「特例会見」実現に向けて官邸サイドに働き掛けるなど、今や中国が最も頼りにする「親中派」大物議員だ。それだけに日中関係も、検察捜査を受けた小沢氏の影響力次第という見方が強い。本稿では中国が小沢氏をどう見ているのか、そして「親中派」と見られる小沢氏は、実際に中国をどう捉えているのかその本音を探りたい。

「鳩山ではなく小沢」

 「小沢さんの捜査次第で民主党もどうなるか分からないでしょう」。これは中国政府幹部の偽らざる率直な感想だ。中国紙も今回の捜査の行方や「小沢像」について一定の程度で報じている。

 「鳩山(由紀夫首相)がいなくても民主党政権はまだ存在できるが、小沢がいなければ民主党政権は恐らく持続は難しいだろう。理由は非常に簡単だ。小沢が『選挙の神様』であると誰もが認識しているからである」。こう報じたのは、国営新華社通信発行の『参考消息』(1月21日付)だ。

 「片や日本最強の反汚職検察機関、片や日本政界で最強権力を持つ政治家。この両雄決闘は一体、いずれに軍配が上がるのか、日本人を釘付けにしている」。こう紹介した『第一財経日報』(同18日付)は現在の「5大懸念」についてこう指摘する。

(1)検察機関は有力な証拠を発見できなかったらどう幕を引くのか
(2)小沢がもし逮捕されれば民主党はどうするか
(3)民主党が検察機関を報復するならば、この闘争はどこに向かうのか
(4)自民党はこの機に今夏の参院選で捲土重来を図れるか
(5)日本のような国家で、検察機関の「暴走」を抑える制度はあるのか

 1月26日付『法制日報』は、「小沢は、田中角栄(元首相)を師としており、東京地検が最も湧き立ったロッキード事件で田中は有罪となったが、小沢と東京地検の恩と仇はこの時から始まった」と解説する。

 多くの論調が、小沢について日本政界を牛耳る「大物」ととらえ、田中角栄と重ね合わせていることが特徴だ。小沢の「中国原点」は田中である。昨年末に訪中した際、小沢は記者団にこう漏らしている。「最初に中国を訪問したのは初当選した40年近く前だったかなあ。私の政治の師匠である田中先生の大英断によって日中国交正常化ができ上がったわけだが、その意味でことさら感慨深い」。

 胡錦濤指導部に対日政策を提言している中国の日本研究者は09年末、北京で筆者にこう解説した。「われわれは今や民主党と鳩山政権を分けて考えている」。民主党政権はある程度長期化するが、鳩山内閣は長続きしないとの見方だ。そしてこう付け加えた。「中国国内では小沢氏の株が上がっている」。


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